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俺たちの魔王はこれからだ。  作者: かっぱ
第一章 〜幼少編〜
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07:マキア、トールに頭突きする。


「マキアちゃん、お誕生日おめでとう!!」


そう言って渡されるプレゼントの山で、私は押し潰されそうです。

いい加減そこのテーブルに並べられている料理に手をつけさせて下さい。


「マキアちゃん、今日のドレス可愛いねえ。私も欲しい」


スミルダちゃんの物欲は今日も絶好調です。

人のものをすぐに欲しがります。でもそれが子供ってもんですけどね。


私は少々げんなりしていました。朝から楽しみにしていた料理が目の前にあると言うのに、生殺しも良い所。

しかし、こうやってお祝いしてくれるお客様の相手をしなければならないのも貴族令嬢として生まれた宿命です。




「マキア、お誕生日おめでとう」


「………お父様!! もう、遅いです。パーティーがとっくに始まって…」


「すまないすまない。準備に時間がかかってね」


お父様が、今さっきパーティー会場にやってきました。

なんだかとてもよそよそしい。


「マキア、お前にプレゼントを用意したんだ。今年はちょっと自信があるぞ」


「………お父様のプレゼントはいつも素晴らしいわ」


ニコリと笑って思ってもいない事を言ってのける。それが今日7歳になった私。

何やら自信ありげだけれど、いったいカルテッドで何を見つけて来たのやら。


ま、きっと予想内のプレゼントでしょうよ。

何が出て来ても、とりあえずいつもみたいに喜んだふりをしよう……


「さあ、おいで。そうそうこっちだよ」


「……?」


お父様は会場の入口扉の方から、誰かを呼んでいるようです。

あれ、ちょっと予想外。


人ですか?



「……」


「……」



ガヤガヤ。

一瞬、人のざわめきがさざ波のように引いていって、まっさら真っ白になりました。


目の前に現れたのは、黒髪黒目の少年です。彼は最初、この会場をひょうひょうとした目で見回していましたが、その視線を私に向けた時、ハッと立ち止まったのです。


私も同じです。

彼を見た瞬間に、今までどこかに閉まっておいた過去の長すぎる記憶の、色鮮やかな鱗片を駒送りに思い出したのです。


その真っ黒な瞳は変わらない。きっとずっと変わるはずも無い。


「「ああああああああああ!!!!!」」


私たち二人はお互い指をさし合って、大声を上げました。

当然会場は静まり返り、何事かと二人を注目するでしょう。


でも、そんなことおかまい無しです。

私はいつもの被った猫を取っ払いました。


「何であんたがこんな所にいるの!!? え?? 何でお父様に? ていうか、今までどこにいたのよ。な、何でもっと早く来てくんなかったのよ。何で私より年上っぽいのよ何で顔変わってないのよ何であんたの目つきはそんなに悪いのよ何で何で………あ、おいしい料理あるよ、食べる? じゃないわよもおおおおお」


もう、何言ってるのか、自分でさえ分かっていません。手振り身振りで頭を抱えたり一周回ってみたり騒がしいです。

やめて、みんな見ないで!! 見せ物じゃないのよ!!


「あれ!? 何でお前がここに……?」


やって来た少年も同様に目を回しています。


でも、そうね。

きっと私たち、また会えるって分かってたはずなのだけれどね。


私たちがいくら膨大な記憶を抱え込み、知識を抱え込み、沢山の人々を高みから見下ろしたって、同じ目線の人がいないと寂しいに決まっているじゃない。

だから本当は、もっともっと早く会いたかった。


私たちは思う存分パニクった後、少し息を整えてちゃんとお互いを確認しました。

そして、この姿で生まれて初めて、私は大声を上げて泣きました。

泣きながら彼に抱きつきました。

何度も名前を呼んで、小さな彼の体に頭突きしていたと思います。


トールはちゃんと私を受け止めて、地に足付けて踏ん張って、抱きしめ返してくれます。


たった7年や10年、会えなかっただけで、こんなにも懐かしい。

私たちは再び会った事で、それまでの寂しさや悔しさを、言葉にせずとも分かりあえるのです。

それが私たちの複雑な絆の証です。



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