表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺たちの魔王はこれからだ。  作者: かっぱ
第一章 〜幼少編〜
10/408

02:マキア、ごっこ遊びを検証する。


よく、大人のスペックを持ったまま子供に戻りたいなんて言うけれど、実際それほど良い物でもないです。

何がつまらないかって、それは同じ年頃の子供と全く会話が噛み合ない所。


当然です。私は精神年齢約200歳以上な訳ですから。

たかだか6歳のおチビちゃんと同じレベルの遊びが出来たら、逆に凄い。


「あたしがお姫様で、マキアちゃんは犬ね」


「………ふっ」


子供のごっこ遊びはある種の権力階級を示しています。


例えば、ここに同じ歳の女の子が5人居たなら、一番我が侭で乱暴な女の子がとにかく“お姫様”ポジションを奪取します。

今はそれが、同じく貴族の令嬢であるスミルダちゃんです。次にお母様ポジションをちゃっかり者のリンダちゃん。かっこいいものがが好きなミリアちゃんがいつも王子様。そして、引っ込み思案で何も言えないカミーユちゃんが犬になりたくなさそうだったので、私が犬役をかってでて、カミーユちゃんにメイド役を譲ります。


なぜこのメンツに犬がいるんでしょうね。私はそれの方が気になって仕方ありません。お父様役って居ないんですね。


子供相手にたかがごっこ遊びの役を奪い合うのも大人げないというか、くだらないなと思っていたので、仕方なく犬に甘んじています。

しかし、この犬役って言うのが結構屈辱的です。


「ダイアナ、ご飯ですよ」


犬の名前はいつも決まってダイアナです。

クッキーやらビスケットやらが置かれた皿を目の前に出されます。

それを普通に食べようとしたら、スミルダちゃんが怒ります。


「ワンと言って、食べなさい」


「……」


ふざけんなよこのクソガキがっ。

いったい私を誰だと思っているの。


なんて、心の中で思っていても言えません。

ここでスミルダちゃんに何か言ったらすぐに泣きます。

泣いたらお茶会中の奥樣方がやって来て、スミルダちゃんの母親のビグレイツ公爵夫人に目をつけられます……






奥樣方のお茶会が終わって、皆が馬車に乗って帰って行くのを子供部屋の中から見送った後、ドッと疲れが出ます。


「ヨーデル、部屋を片付けてちょうだい」


ヨーデルと言う使用人がいます。そばかすだらけで能天気面した若者です。

良く仕付けられた他の使用人たちと比べたら、こいつはドジで間抜けでその上KYです。

言ってはいけない事を平気で言っちゃうタイプですが、まあそこがある意味面白いかなと思っています。


「はい、マキア様」


ヨーデルは相変わらずのマイペース具合で、口笛を吹きながら片付けを始めました。

私はそれを尻目に見ながら、収穫前のデリアフィールドの豊かな実りに気がつきました。窓辺からは、一面金色の麦畑が見えます。


ヨーデルの吹いている口笛は、遥か昔からある民謡です。私ですら知っている、本当に昔からあるメイデーアの歌。


「そう言えば、マキア様っていつも犬役ですよね」


「おだまり」


ちょっといい感じの懐かしさにふけっていたのに、空気ぶちこわしメーカーのヨーデルは歪みない。


ええ、犬ですとも。

子供の遊びに思いやりや譲り合いは皆無です。

みんな自分の欲しい物を主張しますからね。そこで勝ち残る為には変な遠慮は損です。


我が侭を言った者勝ち。

それが子供の世界。

しかし今更、私は子供になれない。子供だらけの中で我が侭言ったって虚しいだけ。

大人の世界で我が侭し放題だから楽しいって言うのに。


「ああもう、つまらないわ〜」


地球での前世って、今思えば恵まれてたんだな。

側に、自分と同じ境遇の者が居ただけで、残された記憶を語り合える者が居ただけで、多分色々と楽だったんだろう。


私は窓辺に腰掛けて、今日も子供らしからぬため息をつく。

いっそ何もかもへの遠慮や気遣いを全てやめてしまって、昔みたいに大暴れしちゃおうかな。

でも、まだ早い。まだ早いと分かっています。


どうせなら、子供時代はスキップさせてほしかったです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ