第七話 隠された刃
影兵士の群れが、
波のように押し寄せる。
結界の表面が、
ミシミシと軋んでいた。
「ティファニー、
持つか!」
バルガスが叫ぶ。
「……限界が近い!」
彼女の額に、
汗が滲む。
ライクは、
前線で影を斬り伏せながら、
後退していた。
「数が減らない!」
アドルの魔法も、
追いつかない。
フィオは、
息を切らしながら笑う。
「はは……
これ、
笑えないね……」
佐山は、
状況を見極めていた。
管理者代行体は、
祭壇の中央で
微動だにしない。
影兵士は、
無限供給に近い。
(核を叩くしかない)
(一瞬で、
仕留める)
佐山は、
腰の短剣を抜いた。
現代製の、
量産品。
だが、
彼の手に握られた瞬間、
刃が微かに輝く。
異世界で身につけた、
魔力操作。
最小限。
気取られない程度。
佐山は、
影兵士の動きに紛れ、
前へ進む。
一体。
二体。
短剣が走る。
急所だけを、
正確に貫く。
音は立てない。
バルガスは、
違和感を覚えた。
「……減っている?」
ライクも気づく。
「影が、
消えていく」
ティファニーは、
微かな魔力の流れを感じる。
(誰かが……
戦っている?)
佐山は、
ついに祭壇の縁へ到達した。
管理者代行体は、
こちらを見ない。
だが、
核は、
確かにそこにある。
胸部の奥。
赤黒い光。
佐山は、
一瞬だけ、
呼吸を止めた。
(今だ)
踏み込む。
床を蹴る音すら、
消した。
短剣が、
一直線に突き出される。
ズンッ。
手応え。
核に、
深く突き刺さる。
管理者代行体が、
初めて反応した。
「……エラー」
体表に、
亀裂が走る。
影兵士の動きが、
一斉に止まる。
バルガスが吼える。
「今だ!」
ライクが
全力で斬撃。
ティファニーが
最大出力の光魔法を放つ。
アドルが
魔力崩壊を重ねる。
フィオが
核の露出部へ
短剣を叩き込む。
轟音。
管理者代行体が、
粉々に砕け散った。
光が消える。
静寂。
しばらく、
誰も動けなかった。
「……終わった?」
フィオが呟く。
ティファニーは、
周囲を見渡す。
「影兵士の反応……
消えたわ」
バルガスは、
祭壇の前に立つ。
「誰かが、
核を突いた」
ライクが、
低く言う。
「俺たちじゃない」
視線が、
周囲を巡る。
佐山は、
すでに壁際へ戻っていた。
息を整え、
魔力を完全に封じる。
(……危なかった)
ティファニーは、
胸に手を当てる。
「この感じ……
さっきと同じ」
「見えないけど、
近くにいる」
バルガスは、
静かに言った。
「敵じゃない」
「なら、
今はそれでいい」
佐山は、
小さく苦笑する。
(勘が鋭すぎるんだよ……)
だが、
中枢は破壊された。
少なくとも、
統合は止まったはず。
だが――
祭壇の中央に、
新たな魔法陣が
浮かび上がる。
「……まだ、
終わりじゃない」
アドルが呟く。
佐山の背筋に、
冷たいものが走った。




