第六話 管理者の影
祭壇の上で、
光が渦を巻く。
青白い光の中から、
ゆっくりと
人の形が浮かび上がる。
細身の体躯。
長いローブ。
顔は、
フードの奥に隠れている。
「……歓迎しよう」
くぐもった声が響いた。
男とも女とも
判別できない声。
バルガスは、
大剣を構えたまま動かない。
「お前が、
このダンジョンの
管理者か?」
影は、
小さく頷いた。
「正確には、
管理装置の
代行体だ」
アドルが、
歯を食いしばる。
「目的は何だ」
影は、
ゆっくりと両手を広げる。
「実験だ」
「世界と世界を
重ね合わせた時、
どのような
進化が起こるか」
ティファニーが、
青ざめる。
「そんな……
命を使った実験……」
「命は、
情報だ」
影は、
淡々と言う。
「情報が多いほど、
可能性は広がる」
フィオが、
小さく呟く。
「……話が通じる
タイプじゃないね」
佐山は、
影を見つめながら、
違和感を覚えていた。
(こいつ……
人じゃない)
(だが、
魔物でもない)
もっと別の何か。
システムに近い存在。
バルガスが言う。
「実験は終わりだ」
「元の世界に
戻る方法を示せ」
影は、
首を横に振る。
「それは不可能だ」
「既に、
統合は始まっている」
「やがて、
二つの世界は
完全に重なる」
沈黙。
重すぎる言葉だった。
ティファニーが
震える声で言う。
「……止められないの?」
影は、
少しだけ間を置いた。
「中枢を
破壊すれば、
停止はする」
「だが――」
「中枢には、
管理者権限を持つ者しか
近づけない」
アドルが、
目を細める。
「つまり、
お前自身か」
影は、
何も答えない。
それが、
答えだった。
フィオが、
小さく笑う。
「じゃあさ」
「ぶっ倒せば
いいんだよね?」
バルガスが
ゆっくり頷く。
「そういうことだ」
影の周囲で、
空間が歪む。
黒い光が
渦を巻き、
無数の影兵士が出現する。
「排除を開始する」
機械的な声。
「来るぞ!」
ライクが叫ぶ。
影兵士が
一斉に襲いかかる。
ティファニーが
結界を張る。
「守る!」
アドルが
範囲魔法を放つ。
爆炎が広がる。
だが、
影兵士は
次々と再生する。
佐山は、
歯を噛みしめた。
(このままじゃ、
押し切られる)
彼の視線は、
影の胸部に向かう。
管理者代行体。
中心に、
小さな核が見える。
(あそこを
潰せば……)
だが、
今まで以上に
危険だ。
下手に動けば、
正体が露見する。
佐山は、
拳を握り締める。
(それでも……)
仲間たちの姿が、
脳裏に浮かぶ。
――俺は、
勇者だった。
そして今も、
戦う理由は変わらない。
佐山は、
一歩、
前へ踏み出した。
影の中から。




