第十七話 管理補助官
広間の空気が、
張り詰める。
赤黒い結晶柱が、
低く唸るように
震えている。
佐山は、
男から
視線を逸らさない。
「ここは、
もう終わりだ」
「結晶も、
破壊する」
男――管理補助官は、
くつくつと
笑った。
「無駄だ」
「これは、
仮の器に
すぎない」
「いくら壊しても、
向こう側で
再構築される」
佐山は、
一歩踏み出す。
「なら、
お前を倒す」
管理補助官は、
肩をすくめた。
「できるものなら、
やってみろ」
次の瞬間。
男の姿が、
ぶれる。
残像。
佐山は、
反射的に
後方へ跳ぶ。
直後。
先ほど立っていた
床が、
抉れた。
(速い)
男は、
手を振る。
空中に、
黒い刃が
生成される。
十本以上。
一斉射出。
佐山は、
短剣で弾き、
避ける。
一本が、
肩をかすめる。
血が、
滲む。
(威力も高い)
佐山は、
踏み込む。
間合いに
入る。
短剣を、
喉元へ。
――が。
男の身体が、
霧状に
崩れる。
すり抜けた。
背後から、
衝撃。
佐山は、
前に
吹き飛ばされる。
転がり、
受け身。
「物理と、
魔力の
中間存在だ」
「お前の世界の
理屈では、
完全には
捉えられない」
管理補助官が、
ゆっくり近づく。
佐山は、
口元を拭う。
(厄介だが……
知ってる)
異世界で、
似た存在と
何度も戦った。
対処法は、
一つ。
魔力の
質を変える。
佐山は、
呼吸を整える。
短剣に、
淡い白光が
宿る。
純化魔力。
「ほう……」
男の表情が、
初めて
変わった。
佐山は、
踏み込む。
横薙ぎ。
男の腕が、
斬り飛ばされる。
霧化せず、
実体のまま。
「なっ……!」
佐山は、
止まらない。
連撃。
胴。
脚。
最後に、
喉。
管理補助官の
身体が、
光の粒子となり、
崩れる。
静寂。
佐山は、
荒く息を吐く。
だが――
結晶柱は、
まだ脈打っている。
(本命は、
こっちか)




