第十六話 仮中枢
裂け目の前で、
佐山は一度、
深く息を吸った。
(入るしかない)
半端な状態のまま
放置すれば、
いずれ完全に
繋がる。
そうなれば、
被害は
比べ物にならない。
佐山は、
裂け目へ踏み込んだ。
視界が、
歪む。
上下左右の
感覚が、
一瞬消える。
次の瞬間。
石造りの通路に
立っていた。
異世界側の
ダンジョンだ。
だが、
ところどころが
現代風の
配管や壁に
侵食されている。
混ざり合っている。
(完全な
仮接続空間か)
空気が、
重い。
魔力が、
粘つくように
肌に絡む。
進む。
すぐに、
魔物と遭遇。
四足の獣。
骨が
外に露出している。
死霊系。
佐山は、
短剣で
一閃。
首が落ちる。
二体目。
三体目。
迷いなく、
処理する。
通路の奥が、
赤く光っている。
鼓動音。
ドクン……
ドクン……
第七ダンジョンで
見たものと、
よく似ている。
(やっぱり、
同系統だ)
広間に出る。
中央に、
赤黒い結晶柱。
その周囲に、
魔法陣。
だが、
人は縛られていない。
代わりに、
大量の魔物の
死骸。
吸い尽くされ、
干からびている。
(生体なら、
何でもいいのか)
佐山は、
眉をひそめる。
結晶柱の根元に、
人影。
若い男。
フードを
深く被っている。
「……人間?」
男が、
ゆっくり
顔を上げた。
赤い瞳。
「お前が、
干渉者か」
佐山は、
短剣を構える。
「誰だ」
男は、
口元を
歪めた。
「向こう側の
管理補助官だ」
「この世界と、
向こう側を
繋ぐ役目を
持っている」
佐山の目が、
細くなる。
(厄介なのが
出てきたな)




