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第十三話 目覚めた少女


探索ギルド付属医療棟。


消毒薬の匂い。


白いカーテンで

区切られた個室。


ベッドの上で、

女性――いや、

少女が眠っていた。


年の頃は、

十六、七歳ほど。


黒髪。


頬は、

やせ細っている。


佐山は、

ベッドの脇に

立っていた。


医療班の女性が、

説明する。


「栄養失調と、

魔力枯渇です」


「命の危険は

ありません」


「ただし、

しばらくは

安静が必要です」


佐山は、

頷いた。


「ありがとうございます」


医療班が、

部屋を出ていく。


静かになる。


少女のまぶたが、

わずかに動いた。


佐山は、

身を乗り出す。


ゆっくりと、

目が開く。


黒い瞳。


怯えた色。


「……ここは?」


か細い声。


「探索ギルドの

医療棟だ」


「もう安全だ」


少女は、

天井を見上げる。


しばらくして、

小さく震えた。


「……生きてる」


佐山は、

無言で頷く。


少女は、

涙を浮かべる。


「ありがとう……」


「助けてくれて……」


佐山は、

どう答えるべきか

少し迷った。


「当然のことを

しただけだ」


少女は、

ゆっくり首を振る。


「誰も、

来なかった」


「ずっと、

一人だった」


胸が、

少し痛む。


「名前は?」


少女は、

少し考えてから

答えた。


「……ミナ」


「苗字は、

わからない」


記憶が、

曖昧なのだろう。


佐山は、

頷く。


「ミナ」


「これから、

どうするかは、

ゆっくり決めればいい」


ミナは、

佐山を見る。


「……あなたは?」


「佐山孝也だ」


ミナは、

小さく口の中で

繰り返す。


「……佐山さん」


少しだけ、

表情が和らいだ。


沈黙。


ミナが、

意を決したように

口を開く。


「私……

時々、

変な夢を見る」


「暗い部屋」


「大きな柱」


「声が……

頭の中で……」


佐山の表情が、

わずかに硬くなる。


「どんな声だ?」


ミナは、

眉をひそめる。


「……わからない」


「でも、

何かを

集めろって……」


(残滓か……)


中枢が

完全に消えたとしても、

影響は残る。


佐山は、

静かに言う。


「怖かったら、

すぐに言え」


「一人で

抱え込むな」


ミナは、

小さく頷いた。


「……はい」


佐山は、

立ち上がる。


「また来る」


部屋を出る直前、

ミナが

小さく言った。


「佐山さん」


振り返る。


「……行かないで」


佐山は、

一瞬だけ

言葉に詰まる。


「すぐ戻る」


そう言って、

ドアを閉めた。


(関わりすぎるな……)


だが、

胸の奥が

ざわついていた。


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