席は空いた
お会計の場面がやって来ると、俺は飯やら服代などでクレアに奢ってもらっていたのでここはプレゼントという形で支払う。
「貴方って意外と気使えるのね」
「悪いか?」
「いいえ?良いとは思うわ」
店員さんが杖を箱に入れるときに禁断の質問をしてくる。
「カップル割りがあるんですけどカップルですか?」
「はい?」
「カップル割りがあって、15パーセント安くなりますね」
(15パーってでかくないか?)
俺はチラッとクレアの方を見ると彼女は恥ずかしそうにして、動けずにいた。
ケチだと思われてしまうかもしれない、だがその割引はでかい。
「はい。カップルです」
「?!」
「左様ですか。では割引させてもらいますね。お値段こちらになります」
ラッキーだったな。
しかし一方で自分が支払うときだけ割引を使うというのも恥ずかしい話だ。
店を出るとラガーは「今日は色々分かったからええわ。何かあったらラガー先輩に二人とも相談してな」と言い、帰っていった。
彼女の方を見ると何も言わず、もじもじしている。
「どうしたんだ?そんな気持ち悪い動きして。芋虫みたいだぞ」
「はぁ?!本当にありえない」
「その動きからはそれしか思い浮かばない」
「……さっき店でカップルって言ったじゃない。あれって他の人にも言ってるの」
下を向きながら質問してくる。
「恥ずかしかったのか?」
「違うわよ。ただ気になるだけ」
「俺はクレア、お前としか遊んだことがない。だから他の人に言ったことはないな」
「そ、そう。今日はありがと」
顔を見ずに去っていってしまう。
寮の近くまで送ろうと思っていたが必要はなさそうだ。
さて、夕方から暇になってしまった。
ダンジョンに行って単位でも稼ぐか。
今日は休むつもりだったが……まぁいい。
ラガー。
あいつのせいで俺は変な気持ち悪さが生まれていた。今まで監視されていたような気味の悪さだ。
そして素性を明らかにせず一方的に話術で情報を得るやり口。
あいつは……。
……ダンジョンに行こう。
気分転換になるかもしれない。
ラガーは木陰に隠れながらカードの束を胸ポケットから取り出す。そして一枚のカードをめくっていた。
「やっぱりな……計画通りやわ」
彼女はその結果を見た後、ビリビリに破くと足で踏みつける。破れたカードに何が書かれていたのかは今となっては分からない。
「まぁ元から椅子はたくさんあるしな。ただあいつがその椅子をどれほど壊すか」
ラガーはその場を去って行こうとすると、とある人物とすれ違う。
相手は彼女のことを見ていない。だが彼女は見ていた。
オッドアイの持ち主で、何かが匂う。
普通の獣人ではないことは確かだ。
彼女は胸ポケットからもう一枚、カードを取り出した。
そしてポツリと一言。
「ようこそ」
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