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新しい自分


 クレアは制服ではなく私服の姿で来ていた。

普段よりも一層甘い匂いが隣から押し寄せてくる。


「それ、どこの香水だ?」


歩きながら聞いてみる。


「……教えない」

「愛想の悪い奴だな」

「それはそっちでしょう?最初出会った時から可哀想ぶってたくせに、実は魔法めっちゃできます?腹立つ」


彼女は頬を膨らませると俺の腹をつまみ、ひねる。


「いてぇな」

「当たり前でしょ。そのためにやってるんだから」

「まず最初出会った時から可哀想ぶってない」

「そうかしら?2年生の時に廊下で転けてたのを私が助けてあげたじゃない」

「余計なお世話だ」

「はぁ?」

「俺が片腕ないことを知ってから余計なお節介をかけ続けたんだろ」

「ば、だって、周りの人間にも色んなこと言われてたじゃない?」

「俺は気にしてない。だから余計なお世話」

「マジでムカつく」


彼女と出会ってから2年が経つのか。

こいつは正義感が強いのか世話好きなのか知らないが出会って以来、廊下や授業ですれ違うたびに俺に何かしてきていた。


「マジでマジでムカつく。実力隠してたのは私を馬鹿にするために?」

「んなわけあるかよ。ただ期末テストまで隠していようと思っただけだ」

「四年生まで?アホじゃないの?」

「期末テスト後に成績によっては交換留学ができるだろ。それのために成績優秀者でありたいから実力を隠してた」

「3年間も隠してたってこと?」

「そんなには隠してないさ。ただ努力はしてたな」

「だから図書館に入り浸ってたんだ……。友達がいないからかと」

「それもあるがな」



校門を出るとすぐさま街は広がっていた。


「ここ、新しくなり続けてるわね」

「ああ。俺らが一年生の時にこんな数の店なかったもんな」


学院の前にある街、「ライカー街』はアルネシア王国の中でも最大規模の街だった。

首都に代わっても良いと思う。


「またオシャレな店ができたわね」


ここの街が発展し続けているのには理由がある。学院の前ということもあり、若い年齢層の学生に溢れていること。そして魔導書やら杖をわざわざ買いに旅人や魔法使いがやってくること。それを聞いた商人が買い漁りにくること。


街や学院から一歩離れれば古代ダンジョンやら自然が豊かなこともあり、日々探索が進められている。そのおかげもあるのだろう。


古代ダンジョンの数はここが王国の中で飛び抜けてもいる。買うだけではなく旅をするものも来るのだろう。


気がつくとクレアは俺をじっと見ていた。


「なんだよ」

「毎日制服なの?」

「ああ悪いか」

「はぁ?悪いに決まってる。痛むわよ」


彼女が足早に進んだのは一際学生たちが賑わうファッションストリートだった。気のせいかカップルも多い。


「言うのが恥ずかしいんだが俺、今金ない」

「はぁ?……もう私が払うわ。あとで返してね」

「いや俺服いらないし」

「……じゃあこの前助けてくれたお礼であげるわよ」


ちょろいな。こいつ。


「お節介すぎないか?悪い男に捕まるぞ」

「馬鹿にしないでくれる?貴方が可哀想すぎるから私が助けてあげてるだけ」

「はいはい」


彼女がまず一見目に選んだのは落ち着いた、シックな色合いがポイントの店だった。


「貴方、こういう地味、間違えた。落ち着いた色合い好きでしょ」

「店の中で地味とか言うなよ」

「言ってないから。それに貴方が言わないで。結構声大きい」


彼女がまず取り出したのは黒の編み物で出来た服に金色の薄いチェーンが首にかかっているものだった。


「下は……反対色の真っ白でも良いわね。これ、試着してみて」


何故か一人でファッションショーが始まっている気がする。


俺はめんどくさい気持ちを抑えて着替える。

服を着替えるって言うのはこんなにも困難だったか?


「……良い感じじゃない。でもまだ何かがダメね。髪だわ。次、髪行くわ」


「行くわ」ってもう強制じゃないか。


「普段どこで切っているの?」

「自分」

「はぁ?自分で?」

「自分。伸びてても結べば良いし」

「最悪。急いで行くわよ」


次にやってまいりましたのは小洒落た散髪屋。

しかも何故か先ほどと似たようなシックな感じの店内テイスト。


「今日はどのような感じで?」


明るい金髪のお兄さんが聞いてくる。


「ここをこうして、横は5cmほど刈り上げて……」


椅子に座る俺の横で母親のように立ちながら髪型の要望を伝えている。くそ要領が良いのかお兄さんも「うんうん。良いね。うんうん。そうしたら〜こう言う方が」とか話めっちゃ進んでんじゃん。


しばらくしてお互いの意見が一致したのか「「いきましょう!」」という掛け声と共に散髪は始まった。




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