第8話:新たな友情の始まり
姫歌が目を覚ますと、天蓋付きの豪奢なベッドに横たわっていた。
「ここは…?」
国賓が接待される最高級の部屋。
輝く調度品。ふかふかの絨毯。
目を見張るほどの美しさが目の前に広がる。
しかし、薄汚れた自分を見て、姫歌は嫌悪感を覚えた。
「このままじゃ、まともに話もできない…。」
彼女はプロンプトを開き、衣服を生成した。
白と金の繊細な刺繍が施された高貴なドレスへと変化する――
その直後、侍女が駆け込んできた。
「王女様がお話しになりたいとのことです…どうか逃げないでください。」
王女――この国の最も高貴なる存在が、自分にわびたいというのか。
しばらくすると、王女が部屋に入ってきた。
「兄や家臣たちが犯した数々の無礼…どうか許してほしい。」
その姿は威厳に満ちていたが、目の奥には誠実な思いが宿っていた。
「私はこの世界の『聖女』の役割を知っている。歌を歌い、寿命を分け与え、誰かのために命を使うことは、聖女にとっての幸せな生き方なのだ。」
王女は静かに語る。
「寿命を分け与えた者の魂は、今も多くの人々の中に息づいている。たとえ夭折しても生涯忘れられることはない――誰よりも幸せだったのだ。」
姫歌は ぎゅっと拳を握った。
「でも…私は、もう何も失いたくない。」
王女はゆっくりと首を振る。
「国民の健康寿命が延びれば、国は発展する。国が発展すれば、国民の暮らしも豊かになる。だからこそ…聖女として、歌を歌ってほしい。」
沈黙する姫歌。
「すぐに返事はいい…考えておいてくれ。」
そう言い残し、王女は去った。
それから王女は毎日やってきた。
彼女の年齢は姫歌と近く、互いに打ち解けていく。
王族らしからぬ遊びを楽しみ、夜更けまで語り合う。
そして姫歌は再び、心を許せる友を得た――