第4話:沈黙の聖女
町の人々は戸惑った。「聖女さまが、突然歌わなくなった」と。
依頼人は次々と訪れるが、姫歌はその申し出をすべて断った。
「私には…もう歌う理由がない。」
しかし、それでも彼女のもとを訪れる者はいた。
「聖女さま…助けてください。」
それは、一人の母親だった。腕の中で苦しそうに息をする幼い少女。
「娘は、生まれつき弱くて…もう長くありません。でも、聖女さまの歌を聞けば、もしかしたら…!」
姫歌は固く唇を結んだ。
「歌えば寿命を削る。それを知っていて、私に頼むの?」
「わかっています。けれど…この子はまだ5歳なんです。命を分けていただけるなら、せめて少しだけでも…」
姫歌の心に葛藤が生まれる。
(そんなこと言われても…!私はもう歌わないって決めたのに…!)
しかし、ふとノォトの最後の笑顔を思い出す。
「死ぬ前に、誰かの役に立ちたかった」
その純粋な願いを。
歌えば寿命が減る。けれど、誰かの命を救えるかもしれない。
「……どうして私は、こんな選択を迫られるの?」
姫歌の拳が震えた。しかし、幼い少女の苦しげな息遣いを聞いて、気づく。
(私は、ずっと自分のために歌ってきた。でも、今なら…誰かのために歌えるのかもしれない。)
姫歌は決意し、ゆっくりと口を開いた。
「……たった一曲だけよ。」
沈黙を破る歌声が夜空に響いた。