第3話:初めてのステージ、そして運命、絶望の淵で見つけたもの
ユニット名はヒメカノォト。そして、町を統治する慈善家の貴族からコンサートの依頼が届く。
「難病の子供たちのための歌…それなら、寿命を削る価値があるかもしれない。」
姫歌とノォトは、ライブに向けて振り付けや歌のアイデアに没頭し、練習に明け暮れる。
そして、ライブ前夜。
「ノォト、ステージ衣装を生成してあげる。」
姫歌がプロンプトを使い、美しい衣装を作り出すと、ノォトの瞳が輝いた。
「姫歌さん…魔法も使えるんですね!」
「まあね、大聖女って呼ばれてるし?」
冗談めかして言う姫歌。しかし、それは今後の運命を変える力でもあった――
ライブ当日。難病の子供たちのため、丘の上にステージを生成し、コンサートを開始する。
姫歌とノォトは、命を削りながら歌う――それでも、最前列の子供たちの輝く瞳に、何か大切なものを感じていた。
「この歌が、誰かの希望になればいい――」
しかし、その直後。
「ノォト!?どうしたの!?」
彼女は、突然ステージの上で倒れる。
「ノォトはずっと難病を患っていたんです。」
姫歌は、絶望する。
共に暮らし、共に歌い、共にステージに立った少女。
最も親しく、最も心を通わせた本当の友達――
「死ぬ前に、誰かの役に立ちたかった。ありがとう……」
自分の寿命を削りながら、最後の瞬間まで誰かのために歌を届けたノォト。
ノォトが息を引き取った夜。
姫歌は、一人、月明かりの下で呆然としていた。
「……なんでよ。」
喉を潤す水のように、誰かのために歌った彼女は、まるで燃え尽きるように命を使い果たしてしまった。
その事実が、姫歌の胸に鋭く突き刺さる。
「こんなの、間違ってる。歌は…こんなものじゃない。」
姫歌は震える手でプロンプトを開いた。
《ノォトを元に戻す》
それは願いだった。しかし、「生成」ボタンを押しても、何も起こらなかった。
「チート能力でも、命は作れないってこと…?」
姫歌はこれまで、力に頼りすぎていたことを痛感する。
この世界で「歌」は、ただの娯楽ではない。
それは命そのものだった。
「……もう、二度と歌わない。」
唐突な別れに絶句し、姫歌はそう決意する。
ノォトのために喪に服し、ステージ衣装も生成せず、歌を封印した。
しかし、その決意の先に待つ運命は――?