第2話:聖女としての覚悟と絶望
姫歌のアカペラライブが異世界中に広まり、瞬く間に「新進気鋭の聖女さま」として祭り上げられた。宿屋の場所まで突き止められ、コンサートの依頼が殺到する。酒場の営業、職業ギルドのイベント、大富豪からの個人依頼――しかし、その依頼のほとんどは寿命を延ばしたい欲深い者たちからだった。
「なんなのよ、これ…!」
歌えば歌うほど、自分の命が削れる。それを知ってからというもの、歌を求める者たちの執念深い視線が恐ろしくなった。
そんな中、ある少女が訪ねてくる。
「私も、一緒に歌いたいんです!」
その少女――ノォトは、孤児院育ちの少女だった。貧しく、毎日生きることに必死だった彼女は、それでも歌が大好きだった。
「命を削ってでも歌いたいの?」
姫歌の問いに、ノォトは真っ直ぐな瞳で答える。
「大好きな歌を歌って死ねるなら、本望です。」
その言葉に、姫歌の全身がざわつく。
前世で、コンサートの最中に死んだ自分の記憶。
最高潮の幸福の中、「このまま死んでもいい」と思ったこと。
「……私なら、その気持ち、理解できるかもしれない。」
彼女の揺るぎない情熱に共感し、姫歌はデュオを組むことを決意した。