その8。
「主。この水晶はミラーボールだったのですか?四方八方に光が飛び立って綺麗ですね?」
使い魔の猫ちゃんの目に光が乱反射している。
「そんな機能があるとは。これは前任者のババーラのものなの。正しくはデイジーナ・ババーラさんのね。」
「可愛い名前ですねえ。結構な老魔女だったんでしょ。」
「産まれた時からババアじゃないからねえ。」
おや。今度は点滅しだした。
「カラータイマーですかね?主。」
「へええ。止まったら光の国に帰るのかしら。」
「止まったら帰れませんよう!」
点滅が止まった。
「やだわ。爆発するんじゃないでしょうね。
古くなったセルロイドみたいにさ。
あーあ。デカいからって前任者のなんか使わなきゃ良かった。
すぐに、捨てましょう!そーれ!」
とりあえず魔法で持ち上げる。窓をあけて放り投げるか。空高く。馬肥ゆる秋ではないけれど。
(今は三月)
「やめておくんなまし!」
「あら。シロフワちゃん、いきなりみやびな言葉?
「違いますよう。私じゃ、ありませんよう!」
「家を壊すとか、水晶球を壊すとか!
めちゃくちゃでござりますわいなあ。あちき、こまってしまいますわ。」
ぼうっ。
水晶玉から光が出て、天井に小さな少女の姿の像を結ぶ。
全長10センチくらいかな。
白くてふわふわとしたドレス。銀色の髪に銀色の?瞳。
前時代な格好をした美少女だ。
「レ○ア姫方式?」
「何おっしゃってるかわかりまへんが、あちきは先代の魔女、デイジーナ様につかえておりましたの。
屋敷に取り憑いていた妖精…の様なものでござんす。」
「…様なもの?」
フウッ!!
シロフワちゃんの毛が逆立つ。
「…主い。こいつ妖精なんかじゃないですう。
妖精には羽根があるンですよ!
……こいつはただのお化けです。」
「あっ、いきなりバレた。」
ほうう。それならば。
「悪霊退散!
魔除けのパワーストーンよ!
出でよ!
オニキスよ!ラブラドライトよ!ラピスラズリよ!
翡翠にルチルクォーツよ!」
空間収納させておいた愛する石たち。
それらを出現させて水晶球を取り囲む!
シュ!シュ!パチン!
ほうら、五角形の包囲網が出来た。
「主?天井に投げつけるのでは?」
「フフフ。シロフワちゃん。あれは映像。実態はこの水晶球の中よ。このクラックの中から入り込んでいたに違いないわ!」
「なるほど!多少のクラックと内包物は本物の印!ですものね。」
水晶玉を取り込む各種天然石たち。
そのパワーにまけたのか白い煙が現れる。
白い少女の足の先は霞んでいて、水晶玉につながっていた。
それが断ち切れそうになっている。
「や、やめてくださんせ!
リアルな『玉の緒よ、絶えねば絶えね』になってござんす!
あちきはただ、この家を壊されたくなくて、出てきたでありますわいなあ。」
「一緒にアンタも駆除したらすっきり♡すると思うの。」
「そんなっ、殺生なあ。この家の隠し部屋を開けて差し上げようとしてましたのに!
チカラ任せに家ごと壊されるのでは、かないません。
デジーナ様の結界は、あちきなら解けますわ!」
必死で身をよじるゴジックロリータな服を着ている白いお化け。
(でもコトバはありんす言葉。)
パチン。
とりあえずパワーストーンを消すというか収納する。
「なあんだ。早く言ってよ。アンタが解除してくれるんならそれでいいわ。」
「もともとこの屋敷はあちきのものでしたの。死後も未練がましく住みついていたのでありんすが、いきなりデイジーナ様がこの屋敷を買って住みついてしまいましてなあ。」
「あ、アンタの昔話には興味ないし。
デイジーナは正しい手続きで買ったと思うし。」
「そ、そんなあ。」
お化けには同情しないことに決めているのだ。
後が面倒くさいからね。




