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寿(ことほ)ぎの魔女は途方にくれる。  作者: 雷鳥文庫


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7/12

その7。

 王子がいなくなって二日が過ぎた。


あるじ。アイツ戻ってくるかな。」

膝の上に寝転んだシロフワちゃんがつぶやく。

「そうねえ。」

ゆっくりとハーブティーを飲みクッキーを摘む。

至福のひとときだ。

「ブレスレットを持ち逃げしたりしてさ。」

「うーん、その時は王宮に取り戻しにいくわよ。そして出張料金をいただくわ。

…だけどあの猫好き。シロフワちゃんに会いたくて戻ってくるわよ。きっと。」

「いやあああにゃあー」


可愛いシロフワちゃんが耳をぺたんこにして震えてる。


「まあ戻ってこなくても良いけどね。そんなにお金に困ってないし。」

ふふん。

森の中にいればお金を使うこともないからね。

「こないだまでいたマルル国ではかなり儲けましたしね。」

白猫はあくびをして膝から降りた。


「まあね。」


ここの国の前任者の魔女は三百歳まで生きていた。

彼女が亡くならなければまだマルル国にいたはずだ。


「あの国は交通の便が良かったから。バターも砂糖もすぐ手に入ったわ。」

「そうですねえ。主のクッキーにバターが足りないのはそのせいですのに。なんでこんなへんぴな国に来るのを引き受けたんですか?」


ぬるくなったハーブティーを飲み干して愛猫を抱き上げる。

温かい毛並みに顔を埋める。


「主?甘えっ子ですか?」

猫がたてるゴロゴロという音は何でこんなに心を癒すのだろう。

「…里心がついたのかも知れないわねえ。」

「えっ?」

「この隣の国ね?ベロティ王女の国。

そこが私が110年前に生まれた国だったのよ。

私は生まれてすぐに、魔女になるべく連れ去られた姫だったって言ったわよね。」

「ええっ。主は正しくは110歳だったのですか?」

「気になるのはそこ?」

「という事はベロディ王女は主の子孫なんですか?」


うーん。


「ベロディ王女の国はカカオワナ国でしょ。私の生まれたのはその前の国よ。ディディ国。

…やっと生まれた子供。世継ぎである唯一の娘が魔女に連れていかれてしまった。それが国が絶えた一因でもあるわね。

カカオワナ国はその前の国は無かったことにしている。

普通の人は百年は生きられないし、歴史は作られるから。」


以前の王族の1人を娶ったとも聞いている。私の従姉妹らしい。

緩やかに滅ぼされたのか。吸収されたのか。

詳しく知っているものはいない。 


生まれて数日しか居なかった故郷。


「ここの前任者なら詳しく知っていたでしょうね。話を聞いておけば良かった。」

「なるほどお。家探ししますう?以前の婆さん魔女がなんか書き残してるかもですよ?」

「そうね。この家はもう私の名義。前の住民の残した物の所有権は私に移ってるわ。」


本気で調べるか。


「床下と天井裏には何も無かったのは確認済みですにゃ。」

「シロフワちゃん、よくお昼寝してるものね。」


ここの魔女は長年生きてきたチカラある魔女だった。

「隠し部屋がある気がするのよ。どうも。」

妙な結界を感じるのだ。


「…物理的に壊してみようかしら。そしたら出てくるかも。」

「ナイスですニャ。主人!」


頭の中で魔法のイメージを組み立てる。

「すべてを壊して新築にするってのもイイわね!

スクラップ&ビルドでこの国はのし上がってきた。」


「どっかで聞いたセリフですね…瓦礫に埋まったりするんですか?家財はいちど外に出す?」

シロフワちゃんが目を見開いてシッポをピン!とたてた。

「そうネエ…」


その時。


テーブルの上の水晶玉が煌めいた。


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