その10。
「とりあえずこの金貨を収納するわ!もう私のものだからね!」
シュン!シュン!シュン!
容赦なく金貨を収納魔法で取り込んでいく。
あっという間に壺が空になる。
「ナイスです!主!」
シロフワちゃんの目が輝く。
カラン。コトン。
金貨を五枚ほどテーブルに落とす。
「ま、臨時収入という事でこれで美味しい肉を食べましょうね!」
「わあい。」
美猫の前に金貨をかざすと、私の足に身を擦り寄せる。
「スゴイわ。あのお金をしまったんでありんすか。デイジーナ様には出来ませんでござんした。」
アリスゴーストがつぶやく。
「とりあえず、私の口座に入金して、優良株でも買うわ。」
「投資は大事ですニャ。」
「…しっかりしてらっしゃいますなあ。後はお願いでありんすが、この部屋はこのままにしておいてくれしゃんせ。
たまに私がデイジーナ様を偲びとうござんす。」
「ふうん。この部屋自体が祭壇みたいなものなのね、アンタにとっては。」
「あちきぐらいは、あの方を覚えておいてあげたいので。」
ポツリとアリスはつぶやく。
探したが日記の様なものはなかった。
私の故郷ディディ国のことを知る機会は失われたのだろうか。
「流石に日記はご本人が焼き捨てましたでありんす。
色々と、恥ずかしいことを書いてあったみたいなのですから。」
「ああ…そうなの。」
「180年前。デイジーナ様が150歳の時に初めて、ディラン様にお会いなさったときは、見かけは20代前半のお姿でありんした。」
「ふうん。」
「もちろん、魔女が人間と結ばれることはあまりござんせん。ですが、全く無いわけでもござんすよ。」
「知ってるわ。今まで七人いたわよね。滅多に無い事を成し遂げたから、『神セブン』と呼ばれてる。」
「それで、さりげなくアタックなさったのですが、遠回しに王子から『私は細っこい人が好きでね。健康優良児はちょっと。』と拒否られたのでありんす。」
へええ。ワガママボディだったのか。
「それでしおしおと萎れてしまわれて。100歳くらいお老けになったのですえ。」
「みかけと、実年齢が釣り合ったとも言えるわねえ。」
「それでこの国の人たちは、若いふっくら魔女は帰ってしまって、老けたシワシワ魔女が新しく来たんだな、と思ったのでありんす。」
「ははあ。」
何となく読めてきたぞ。
「デイジーナ様はおっしゃいましたのサ。
『私は魔女ババーラ。寿ぎの魔女である。
王家よ。縁談を結ぶ際には我に相談するが良い。
最適な縁を結ぼうぞ。』と。」
「それで王家にお告げ料金をふっかけて嫌がらせをしたわけね。
国庫が傾いたんだもの。」
アリスゴーストは傷ましげに目を伏せた。
「ええ。最初はそうでござんしたが、ディラン様はデイジーナ様が唯一愛した御方。
やはり不幸になるのは嫌で折に触れて色々なアドバイスや、夫婦仲が良くなるためのおまじないなんかもなさってアフターサービスに勤めておいででしたえ。」
ふうっ。
ため息を吐くゴースト。
「ディラン様の子孫にも何かと相談に乗られて。
デイジーナ様は少しでも恋しい人の家系と繋がっていたかったのでありんす。
皆様、ディラン様の血筋でお綺麗でございましたからなあ。
ただ、相場を知らなかったから料金が高額だったと言う事ですえ。」
「あー、それで縁談相談の時しか来なくなったのね。」
お金がなくて王族もそのほかの相談には、来れなくなったんだ。




