その1。
新連載です。宜しくお願いします。
軽い気持ちで読んでくださいね。基本的にコメディです。
「魔女殿よ、寿ぎの魔女殿よ。どうか私に良き伴侶を与えたまえ。」
遠い遠い昔から、この森には寿ぎの魔女が住むという。
この国メルト国の王族の配偶者はみな、この魔女のお告げで選ばれてきたと。
魔女のお告げ通りに結婚すれば祝福を与えられると言う。
で、わたし、ジーナは当代の寿ぎの魔女なのである。
青い髪に紫の目。はい、魔女の特徴です。
ここは森の中の一軒家。
狭いながらも楽しい我が家です。
目の前に若い男が項垂れている。
その姿、青菜に塩をかけられたごとし。
あのさあ。せっかくのお茶飲まないの?
冷めちゃうよ?
久しぶりの来客だからとっておきのを出したのにさ。
彼はメルト国の王子様だという。
薄い色の金髪は汗で濡れそばって張り付いている。
森の中まで来るのに苦労したんだな。
「さあ、水分補給大事。」
「えっと、喉は乾いておりますので、水分補給したいのはやぶさかではありませんが…お茶代…おいくらほどですか?」
「ええとロイヤルジョークなのかも知れませんが。
タダですよ。」
ですよ、のよを、私が言い終わる前にものすごい勢いでお茶を飲み干していく。
…いいお茶だから味わって欲しいんだけどな。
と思いつつおかわりを入れる。
またものすごいスピードで飲んでいく。
喉がスポンジで出来てるのか?
海綿か?
「喉が海綿で出来てるの?」
「グッ!ゲホゴホ!」
あら、むせた。
「海綿体?シ…シモネタ?」赤くなる青年。
いいえ。考え過ぎです。
そして落ち着いたら、いきなり泣き出した。
「うっ、うっ、ううう。ごめんなさい。
お金が用意出来ませんでした。
今、うちの国、色々あって貧乏金無しになったのです。」
「ヒマなしならわかりますが、金無しなのは貧乏なら当たり前では。」
突っ込んでほしかったのか?フリなのか?
「で。ですが。寿ぎの魔女様。どうか私にお告げと祝福を。」
赤くなる王子様。ギャグでは無かったのか。
「是非!良い結婚相手をお導き下さいませ。
お礼は35年ローンでどうでしょうか。
分割手数料はかかるのでしょうか。」
「いや、ジャパ〇〇トじゃないんですから。
まずお礼とかお金?ローン組むとかなんですか?」
「え?」
「え?えっ?」
お互いに顔を見合わせる。
「寿ぎの魔女様ですよね?」
「ええ、私が当代の魔女です。先代が三年前に亡くなって、神聖国ダイランの魔女協会から派遣されて来ました。
結婚関係の祝福もしますけどね、他の業務も承っておりますよ。
……
で?先代は結婚相談所オンリーだったわけなの?
しかも王族限定で?」
「はい。そうでございます。ウチの父母とウチの叔父や叔母も決めていただいたのですが。」
「ヘエエ。」
「毎回めっちゃくっちゃ高額なお礼を強要されてまして。」
「ヘエ?なんかごめん。一応前任者が鬼畜だったってことは謝っておくわ。
おいくらほどお支払いに?」
さっ。
五本指を立てる王子様(自称)。
「50万?まさか500万ギエンではないわよね?」
「いいえ。一桁違います。」
「えっ、まさか。」
「ハイ。5000万ギエンです。」
「ひえええっ。」
なんてこと。ぼりやがるなあ。
「うーん、確かにここは辺鄙な場所だからお客様があまり来ません。だから一本釣りで儲けてたのでしょうねえ。
どこぞのブランドマグロのように。
ちなみに、縁談の世話はどのように?
今の王様と王妃様の見合いをセッティングしたのですか?」
「いえ…ウチの父には結婚相手の候補が五人おりまして。」
「ええ。」
「その中から魔女様が占い、導き下さった母と結婚したのです。」
「ははあ。なるほどね。」
わりと簡単なお仕事でしたねえ。
「おかげ様で両親とても仲が良く。ラブラブでございまして、子宝ザクザク。」
「それはめでたい。」
「…二人の王子に五人の王女でして。姉妹達は嫁いで行きましたが、持参金もザクザク払ってスカンピン・ウォークでございます。
「…そ、そうですか。」
「彼女達の寿ぎ占いも、していただきたかったのですが…」
つつー……。
王子様の目から涙が落ちる。
「そんなお金はどこにもなく。先日の戦争で負けた事もあり、こわれるままに周辺諸国に嫁いで行きました。」
「うーん、冷たい言い方だけど王族としては当たり前では…」
王族が周辺の国と婚姻を結んで結びつきを深くする事は当たり前である。
「望まれての結婚なのですね?」
「ええ、みんな美姫でしたから。」
ふーん、それならそんなに酷い目にあってないのでは。
私達魔女は恋占いや縁結びが得意である。
だから寿ぎの魔女と呼ばれるのだ。
「ええと、前任者がめちゃくちゃ業突く張りだったのはわかりました。特別サービスとして、」
じゃら。
パワーストーンのブレスレットを出す。五つ。
「このブレスレットには恋愛・夫婦仲を良くする効果が、あります。
その美姫なる姉妹さん達に送って差し上げて下さい。」
「えっ。」
「ま、不幸にはならないはずですよ。」
この石にはラブラブパワーが込められているのだ。
「私はね、占いより、こっちが専門なんですよ。」
「これは…妖しくピンク色にヒカリますね!」
「お安くしまっせ。」
「それはタダじゃないんだ!」
王子様の声は森に響き渡った。
当たり前だ。ただなのはお茶ぐらいである。




