闇の魔法
マルガンテから逃走し、岩山を下山したニュイたちは洞窟に逃げ込んでいた。
気絶していたレットも洞窟に着いてからしばらくして目を覚したのだった。
「大丈夫か?レット」
ルミナスの声に反応し、レットは身体を起こし周りの状況を確認する。
「ここは?」
「洞窟の中だ。悪魔と戦ってるところをニュイさんが助けてくれたんだ。サエンさんも腕失ってるし、お前も胸の肉が吹き飛んでたんだぞ」
「・・・・・・そうか。悪魔に胸元を吹き飛ばれて気絶したんだった」
レットが頭を抱えながら自分の記憶を探っていると、洞窟の入り口から足音が聞こえてきた。
「よかった。レットさん目が覚めましたか」
「よぉレット。元気そうだな」
ニュイと左腕に包帯を巻いたサエンが洞窟に入ってきた。
「サエン!!その腕」
「あぁマルガンテにやられた・・・・・・だけど次は簡単にはやられないさ」
サエンは笑顔を見せながら自身の亡くなった左腕を見せてくるが、レットの心配そうな表情は消えなかった。
四人が話していると再び洞窟の入り口から足音が響いてきた。
カラバスとエンベルトだった。しかし、二人は背中に何かを担いでいた。エンベルトは自身よりも大きい黒い物体を担いでいる。
「・・・・・・戻りましたか」
「あぁ・・・・・・悪魔がいなくなってたから簡単に回収できた・・・・・・本当にやるのか?ニュイ」
「えぇ、もちろんですカラバス。ですが成功するかは彼女たちの意思の強さによりますが」
カラバスとエンベルトが担いでいた物を下に下ろした。暗闇の闇に染まってしまいそうほど黒いそれを、レットとルミナスは目を凝らして見てみる。
それは首がなくなったデュランとハンダルの遺体だった。
「デュランさんの遺体・・・・・・これから何をするんですか?」
「デュランを蘇らせます。私の闇魔法の力で」
「闇魔法の力?」
ルミナスが首を傾げるとカラバスがルミナスの肩を叩いた。
「魔法には属性があることは知ってるよなルミナス」
「はい、知ってます」
「属性ごとに使える能力がある。例えば水なら幻覚で相手を惑わせるし、風なら周りの生き物を感知できる」
「へぇ・・・・・・でも闇と光はニュイさんしか持ってないんですよね。どんな能力が使えるんですか」
「闇魔法は死者の魂を現世に縛ることができる・・・・・・つまり蘇生が可能なわけだ」
「死者の蘇生・・・・・・ですがデュランさんは頭は吹き飛んでますけど」
「魂を縛るから身体の状態はどうでもいいのさ、あとは魂が現世に戻りたいという意思が強いかによるがな」
カラバスが闇魔法について説明しているとニュイは杖を使って洞窟の地面に魔法陣のような物を描き始めた。
魔法陣はデュランとハンダルの死体を取り囲むように描かれると、ニュイは自分の手首をブレイドで斬った。
手首からダラダラと垂れるニュイの血は魔法陣の溝に流れ、魔法陣が血で染まるとニュイは杖で魔法陣を叩いた。
すると周りに闇が集まるように黒いもやのような物が立ち込めると、魔法陣が怪しく輝き出した。
「我明けることのない暗闇に佇む者なり。闇に囚われし未練の魂よ・・・・・我が呼びかけに応じ、今現世の光へと舞い戻れ」
ニュイの言葉と共に魔法陣の光が輝きがましていき、もやが濃くなり霧のようにデュランとハンダルの死体を包み込んだ。
「闇の力の元に貴方を縛る。闇への誓い共に崇高なる魂をその身に刻め!!蘇りなさいデュラン、ハンダル!!」
ニュイは杖を魔法陣目掛けて振り落とすと、霧は渦巻くようにように収束すると弾け飛び辺りに拡散した。
デュランとハンダルの死体に変化はなくその場に転がっていた。
ニュイは大量の汗を掻き、息を切らすとその場に座り込んだ。
「ハァ・・・ハァ・・・ダメだったの。デュラン・・・」
ニュイの涙が地面に落ちた。周りが静寂に包まれる中、死体だったはずのデュランの指がピクリと動いた。
デュランとハンダルの首から黒い煙のような物が出てきた。そしてその煙に引っ張られるようにむくりとデュランとハンダルは起き上がった。
(ニュイ・・・様・・・)
周りにいる全員の頭の中にデュランの声が聞こえてきた。
「デュラン!!」
起き上がったデュランに気がつくとニュイはデュランに勢いよく抱きついた。
「よかった。成功したのですね。ありがとうございます、帰ってきてくれて」
(いえ、ニュイ様の従者として当然のことこのまま死んでしまってはニュイ様に合わせる顔がありません)
「本当によかった」
泣きながらデュランを抱きしめるニュイの顔は嬉しそうでもあり、どこか悲しそうに見えた。
そんなニュイを見て、レット達は静かに見守るのであった。




