夜に誓う
魔物に拠点襲われた次の日。レット達は拠点であった洞窟から最低限の荷物を持ち出し、ニュイ達に言われるがまま、森の中を歩いていた。
「すまん、ルミナス。剣壊しちまった・・・」
「・・・・・・まじか。俺の剣が・・・」
レットから手渡された剣を見て、ルミナスがガックシと肩を落としていると、エンベルトが興味深そうに剣を見ていた。
「いらないならその剣、儂にくれないか」
「治せるのですか?」
「いや治してもこの剣は使えん。だから溶かして新たな武器にする」
「・・・・・・わかりました。じゃあ使ってください」
ルミナスは剣を渡すと、エンベルトは自身よりもでかい剣を軽々と持ち上げると剣を背負った。
そして重さを感じさせないほど軽快な足取りで歩き始める。
「まぁお前が生きててよかったよレット。お前がいなくなったなら、俺の夢は叶わないからな」
「あ、あぁ。まぁ一回死んだようなもんだけどな」
森をしばらく歩くと、広大な原っぱに出た。原っぱにの中央には大きな大木があった。
「この辺のはずなんだがな」
「カラバスさんここに何があるんですか?」
「ここに拠点があるはずなんだけど」
ルミナスの問いかけにカラバスは辺りを見渡し何かを探していた。辺りには暗闇と、緑に染まった葉が不気味な風に揺られ音を奏でるだけだった。
「あ、いたいたみんなおぉーい!!」
突然原っぱの奥から男の声が聞こえてきた。暗闇を目を凝らして見てみると、黒い馬に乗った人物がこちらに向かってくる。
白い鎧を身に纏い、赤髪が風で揺れる。腰には剣を下げた青年だった。
「無事だったかサエン」
「カラバスの旦那たちも無事でしたか、ってうおぉぉぉ!!」
突如として馬が立ち上がり、上に乗っていたサエンを振り落とした。サエンは地面に尻から落ちると、馬はデュランの方へとゆっくり近づくとデュランに頭を擦り付けた。
「ふふ、こいつめ。寂しかったぞハンダル。サエンは馬の扱いが荒いからな。苦労しろう」
愛おしそうに顔を擦り付ける、ハンダルをデュランは優しく撫でた。
「まったく主人に会えたからって、振り落とすことないじゃないか・・・・・・あれそっちの二人は」
「あぁ、ルミナスとレットだ。共に戦う仲間だ」
紹介を受けるとサエンはルミナスとレットの手を掴むと少年のような純粋な笑顔を浮かべた。
「よろしくお願いします」
「こいつはサエン・ブリアスタ。バカだか剣技は一級品だ」
「バカとは酷いですね。カラバスの旦那」
「お前は運と腕っぷしで生き残ってるようなもんだからな」
カラバスは笑ってサエンを揶揄っているとニュイがサエンに話しかけた。
「積もる話もありますが、サエン貴方の拠点に案内してもらいませんか」
「いいですよ。ニュイ様、こちらです」
サエンに連れられて、原っぱを歩っていくと、原っぱからも見えた大木の下についた。
「ここです」
サエンが指を刺す方向を見てみると大木の下にテントと焚き火が、あり食料が入った袋が乱雑に置いてあった。そして、その周りを取り囲むように魔物の死体が大量に転がっていた。
「え、ここ?」
「野晒しじゃないか、敵に襲われまくってるし」
「・・・・・・やっぱサエンに先行させるんじゃなかったな」
「ハンダル・・・・・・貴様大変だったな」
「ヒヒーン」
自身満々に拠点を見せてくるサエンに一同は、ドン引きするのであった。
エンベルトの土魔法で原っぱに簡単な穴を掘り、そこを拠点とすることにした。
ハンダルは入れる場所がなかったため、外で待つようにデュランが話していたが、ハンダルは寂しそうに鳴いていた。
朝か夜かもわからないため、寝る時間などは眠くなれば寝るという自由なスタンスを取っていた。
「ん・・・・・・トイレ」
レットは目を覚ますと、横でカラバスとエンベルト、ルミナスが寝ていた。
外に出て用を済ませるとふとデュラン姿が目に入った。原っぱの真ん中にある大きな大木を眺めていた。
レットはデュランに近づくと何を見ているのか気になり、デュランの視線の先を見るとニュイが木の上で、暗闇に閉ざされた空を眺めていた。
「なんだ・・・・・・貴様か」
「こんな時間まで主人の警護か?少しは休んだらどうだ」
レットの言葉にデュランは返事を返さなかった。
静けさが包む二人の間に夜風が吹いた。原っぱの草を揺らし、少し鼻につく草の匂いを運んでくる。
「貴様はニュイ様をどう思う?」
「どう思うって、綺麗だと思うけど」
「そうか・・・・・・確かにニュイ様は美しい。しかしニュイ様は苦しんでおられる」
「苦しむ?何に?」
「・・・・・・私は騎士だ。ニュイ様のお守りするだけで、ニュイ様の心を癒すことはできない」
デュランは悔しそうに拳を握ると、真っ直ぐした目でレットを見た。
「ニュイ様は貴様といると楽しそうだった・・・・・・もし、ニュイ様がお前に自身の苦しみを話す時が来たら受け止めてあげてほしい」
「・・・・・・わかった」
レットはデュランの言葉に力強く返事を返すのであった。