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ナイトパーティー  作者: 内山スク
7章 三百年前の夜編
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リカバリング

 ニュイは魔物を切り裂きながら、歩み進めた。暗い森の中、魔物の死体と鼻に付く血の匂いがあたりに漂う中、剣を振るう黒い鎧を着た女性の姿が見えた。

「デュラン!!」

 ニュイに名前を呼ばれ、デュランは後ろを振り返り笑みを見せた。

「ニュイ様!!」

 デュランはニュイの側に駆け寄ると一礼した。

「お手をわずらわせてしまい申し訳ありません、ニュイ様。ニュイ様をこのような危険な戦場に立たせてしまうとはこのデュラン、一生の不覚であります」

「そんなことは構いません。それよりもデュランこれを」

 ニュイはデュランの手に黒いブレスレットを手渡した。黒いブレスレットにはルビーのような赤い宝石が三つ嵌め込まれていた。

「ニュイ様これは?」

「エンベルトから貴方にと、オリジンシリーズの一つブルートランスです」

「ブルートランス・・・・・・」

 黒いブレスレットは粘土のように形を変えるとランスへと形を変えた。漆のように黒いランスには血管のように赤い線が張り巡らされており、まるで生き物のように拍動していた。

「ニュイ様・・・・・・この槍はどう使うのですか?」

「エンベルトの話によるとブルートランスは血を吸い取る槍のようです。血を吸えば吸うほど威力が増すとか」

「なるほど、それは使いやすいですね」

 ニュイとデュランが話しているとゴブリンの群れが突撃してきた。

「ニュイ様お下がりをここは私が!!」

 デュランはブルートランスを横に大きく振るうとゴブリンの上半身と下半身が切断される。

 ゴブリンの紫色の血がブルートランスに付着するが、ゴブリンの血は水が乾くようにブルートランスに吸収されていった。

「おぉ、これはすごいですね。ありがとうございますニュイ様」

「ここは任せます、デュラン。レットさんはどこにいますか?」

「奴とははぐれましたが、最後に見たのは東の方角に走っていました」

「わかりました。私はレットさんのところに向かいます」

「ニュイ様お気をつけて」

「貴方もね、デュラン」

 デュランは迫る魔物たちをブルートランスで叩き潰し、刺し殺し、薙ぎ払い、ニュイの後を追わせないように蹴散らして行った。

 ニュイは森の奥へと歩みを進める。すると息を切らしたレットの姿があった。

 肩や背中には爪で引っ掻かれたような生々しい傷跡があり、腕の皮膚が焼け爛れたように溶けていた。

「ハァハァ・・・・・・クソ、ここまでか。すまん、ルミナス・・・」

「レットさん!!大丈夫ですか!?」

 ニュイはレットに急いで駆け寄るがレットは満身創痍な身体を動かし、ニュイに身体を向けた。

「ハァハァ・・・・・・ニュイか。すまん俺はここまでかもしれない。ルミナスによろしく言っといてくれ」

「まだ助かりますよ、レットさん。これを指にはめてください」

 ニュイはレットの手に指輪を差し出した。指輪には桃色の宝石が嵌め込まれており、その宝石を咥えるように龍の彫刻が彫られていた。

「なんですかこれ?」

「エンベルトが作ったオリジンシリーズの一つ、リカバリングです。早くつけてください」

 ニュイに言われるがまま、レットは指輪を自身の薬指につけた。

 すると、レットの身体の傷はまるで時間が巻き戻っていくように、みるみると治癒していった。

「なんだこれ!?傷が無くなった・・・・・・痛くない」

「リカバリングは肉体を再生させる指輪。これをつけている限り傷は再生します・・・・・・ですが攻撃を受けた際の痛みは消えないのと再生できないような傷だと効果はないので気をつけてください」

「ありがとう、ニュイ。よっしゃいくぜ」

 レットは棍棒に力を込めると魔物たちを殴り倒していった。ケルベロスに爪を突き立てられようが、サキュバスの爪に貫かれようが怯むことなく、殴り倒した。

 レットに刻まれた傷は瞬く間に元どおりに治り、まるで何事もなかったかのようにレットは戦闘を続行する。

「彼にリカバリングを与えたのは正解でしたね」

 ニュイはレットを見て微笑むと、腰に下げた白と黒の剣を抜刀し、魔物達を切り伏せる。

 そして二人は背中を預けるように魔物を切り伏せていった。

「これで最後です!!」

 ニュイはサキュバスの身体を真っ二つに割くと、息を整えた。

「助かったよニュイ。ありがとう」

「いえいえ、ご無事で良かったですレットさん・・・・・・しかし随分やられましたね」

 レットの身体や服は自身の血で赤く染まっていた。

「あぁ・・・・・・まぁ命があれば些細なことでだよ」

「フフッ・・・頼もしいですね」

 二人が話しているとニュイの後ろから、息を切らしたような声が近づいてきた。その声が近づいてくると草むらから何かがニュイに飛び交ってきた。

 ケルベロスだ。ニュイ目掛けてその鋭利な爪を突き立てようと迫っていたのだ。

 ニュイは不意を突かれたためか、反応することができなかった。

 グシャという肉を裂く音が森の中に木霊した。

 ケルベロスの爪は肉を裂き身体を切断し、支えを失った上半身が地面に落ちる。

 ニュイを庇ったレットの上半身が地面を赤く染めた。

「レットさん!!このよくも!!」

 ニュイはケルベロスに剣を振るうと剣が当たる前にケルベロスの身体は切り裂かれた。

「レットさん!!目を開けてください!!」

 レットは薄れゆく意識の中、ニュイの言葉を聞きながら瞼を閉じるのであった。

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