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ナイトパーティー  作者: 内山スク
7章 三百年前の夜編
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魔物の行進

人は幸福を望む だが幸福にはなれない

なぜなら人は幸福でも満たされない

強欲な生き物だから

 黒い闇に閉ざされた外の世界は、洞窟の中とは別のものに見えた。森の奥や岩肌には目を赤く光らせた魔物たちがこちらを睨みつける。

 三つついた犬の首からよだれダラダラと垂らし、こちらを睨みつけるケルベロス。

 血に染まった長い髪、女性的な身体を持ち、背中からは蝙蝠のような翼を持ったサキュバスのような生物。

 緑の身体を持ち、木の鈍器のような武器を持った少し背が低い生き物。目の焦点の合ってないその姿はゴブリンに見える。

 空には煌々とした炎のような翼を羽ばたかせた鳥が数十体旋回していた。

 そんな魔物たちに囲まれながら、レットたちは洞窟の入り口を守るように立ち塞がっていた。

「これはこれは・・・・・・大層な大所帯で・・・・・・魔物の大行進と言ったところか」

 カラバスは唾を飲み込みながら弓に矢をつがえる。

「気押されるな。ここを破られればニュイ様たちも終わりだ・・・・・・我々が最後の砦というわけだ」

 デュランは剣を腰から抜くと、静かに息を吐いた。

「・・・・・・よし。いくぞ!!」

 レットが背中の大剣を引き抜くと勢いよく魔物の村の中へ突進する。

 それに続くようにデュランも突進すると、カラバスは冷静に魔物の頭を矢で射抜く。

「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 レットは大剣を振いケルベロスの三つの頭を横に引き裂いた。しかし、間髪入れずに数匹のゴブリンがレットに飛びかかってきた。

 レットは大剣を力強く握り直すと横に大きく振るう。

 ゴブリンたちの身体は上下に裂け、地面にボトッと落ちる。

「へっ。どんなもんだ」

 レット剣を構え直すが、ある変化に気がついた。それは先ほど斬ったゴブリンの血が剣を溶かしていた。

「何!?なんだこりゃあ!!」

「ゴブリンの血は鉄や皮膚を溶かす!!貴様はケルベロスやサキュバスと戦え!!素早いが、奴らなら多少はマシだ!!」

 デュランの声が聞こえたため、レットはゴブリンが持っていた木の棍棒を拾うと魔物を倒すために走り出そうとしたその時。

 肩を何かに掴まれ空へと飛び上がった。

「うわぁぁぁぁ。なんだ!?何が起こってるんだ!!」

 レットは上を見てみると、火でできた鳥がレットの肩を脚で掴み優雅に飛んでいた。

「この!!おろしやがれ!!」

 レットは木の棍棒で火の鳥の脚を殴りつけるが、火の鳥の足はまるで煙にでも当たったかのように、すり抜けた。

「なんなんだ!?この生き物は!!」

 レットはどうにか逃れようと、ジタバタともがくが火の鳥は意に返さない。

 しかし、ドスッという音が上から鳴るとそのままレットは地面に落下した。

「いてぇ!!」

 火の鳥の胸の中心が矢で撃ち抜かれていた。カラバスが矢で火の鳥を撃ち落としたのだ。

「大丈夫か、レット!!」

「ああ、ありがとう」

「フェニックスは心臓を一撃で撃ち抜かないと死なない。空は俺に任せろ」

「わかった」

 三人はなんとか魔物たちと戦うが、一向に魔物たちが減る気配がない。

「クソッ。さすがに数が多すぎる!!」

 カラバスは弓に矢をつがえようと矢筒に手を伸ばすが、矢の感触がない。矢が尽きたのだ。

「しまった!!」

 カラバスの目前にケルベロスの牙が迫ってきた、その時。

 後ろから風を切る音が響くと、ケルベロスの身体は真っ二つに裂けた。

「お待たせしました」

 聞き慣れた言葉に振り向くと、そこにはニュイが立っていた。片手には黒い剣、そしてもう片方には白い剣を持って。

「おぉ完成したのか。エンベルトの最高傑作オリジンシリーズ」

「えぇ貴方達の分もありますよ」

 そう話すとニュイはカラバスに白い物体を手渡した。鳥が翼を広げたような、アクセサリーに見えるその物体はカラバスの手に乗ると、白い弓へと変化した。

「デュランは?」

「森の中で戦ってる。レットもいるはずだ」

「レットさんも!?わかりました。すぐ助けに向かいます」

 ニュイは剣を振るって魔物を切り裂きながら森へと向かって行った。まるで見えない刃で切り裂いているように、魔物たちがニュイの目の前で切り裂かれていった。

「どうじゃ?儂の最高傑作オリジンシリーズは・・・」

 カラバスの横に腰の曲がった老人がいつのまにかいた。分厚い手袋とブーツを履き、煤のついた白い髭を蓄えていた。

「エンベルト・・・・・・この弓どうやって使うんだよ!!矢がもうねぇんだよ!!矢を持ってきてくれ」

「矢ならおまえさんの手の中にある。空を掴んでみろ」

「空を・・・・・・掴む?」

 カラバスは言われた通り空を掴むと、カラバスの手の中に青白い矢が生成された。

「おぉ、これがオリジンシリーズ。これはすごいな」

 カラバスは青白い矢を弓につがえ、魔物達を射抜いていく。

 魔物達は雷にでも撃たれたように青白い光に包まれると、焼け焦げたように煙を上げてその場に倒れた。

「それがオリジンシリーズの一つ。サンダーロアー!!」

「サンダーロアー・・・・・・気に入ったぜ。エンベルト」

「その弓の真価はそんなものではない。そいつには本当の使い方がある」

「本当の使い方?」

「そうだ。心の底から撃ち抜きたい物を言ってみろカラバス」

「本当に撃ち抜きたい物・・・・・・」

 カラバスは目を閉じると青白い矢をゆっくりとサンダーロアーにつがえる。

 そして大きく息を吸い込んだ。

「俺が本当に撃ち抜きたい物は・・・・・・てめぇら魔物の命!!」

 カラバスが目を開くとサンダーロアーはバチバチと音を立てて、青白く発光していた。

 カラバスはつがえていた、矢から手を離した。

 すると矢は周りを吹き飛ばすように雷鳴を響かせながら、魔物達を吹き飛ばした。

 焼け焦げ、薙ぎ倒された木々に混じって魔物たちの死骸が転がっていた。

 矢が通った後はまるで、落雷が降りしきったようだった。

「すげぇな・・・・・・これは・・・・・・」

 カラバスは目の前の状況に驚いているとエンベルトは笑っていた。

「ホッホホ、こんなものではないわい。残りの二つのオリジンシリーズもニュイに預けた。二人にも次期届くじゃろう」

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