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ナイトパーティー  作者: 内山スク
1章 盗賊騎士団編
9/98

騎士VS暗殺者その3

 カレッジたちが暗殺者たちと戦っている頃、キーレは自室で月を見ていた。雲に月が隠れあたりが暗くなっているが、あと数秒すれば月明かりが照らすだろう。

 コンコンとドアを叩く音がした。

「・・・・・・どうぞ」

 ドアを開けメイドが入ってきた。ケールだ。しかし、いつもと様子が違う。

 月明かりで照らされた彼女の顔は目がつり上がりこちらを睨みつけている。

 キーレが目線を落とすと氷に身に纏ったように恐怖が全身を包んだ。

 ケールの手には月明かりで照らされ鋭く光った短刀を手に持っていたからだ。

「・・・この時をずいぶん待ちましたよ。お嬢様」

 ケールはフラフラとした足取りでキーレと距離を詰める。

「貴方が雇った傭兵が邪魔でね。ストレス溜まりましたよ。なんでこんな子供を殺すのにこんなにストレスためなきゃいけねぇんだ!!」

 イラついたようにバンっと足で机を勢いよく蹴飛ばした。

 キーレは小さな体を怯わせながらもケールと距離を取る。

「全く、外の仲間との情報交換も毎回邪魔しやがってバレないよう交換しようとしても妨害されて情報をながせやしねぇ・・・本当に鬱陶しい」

 キーレは逃げるが気づけば壁際まで追い込まれていた。目の前には短刀をもったケールがいた。もう逃げ場はない。

 ケールはナイフを振り上げながら震えるキーレを見下す。

「さよなら、お嬢様!!」

 キーレは死を覚悟した。涙を浮かべながらも恐怖から逃れようと目を閉じたその時。

「ぐはぁ!!?」

 ケールの苦しむ声が聞こえる。目を開けるとケールが壁に吹き飛ばされている。

 しかし、それ以上にキーレの印象に残ったのは人一人分よりも大きなランスをもったビトリアだった。

 彼女の待つランスは暗闇で見えなくなりそうなぐらい全体的に黒いが赤い筋のようなものが入っている。

 禍々しい見た目はまるで焼けこげた黒い皮膚に血管が浮き出ているような見た目をしている。

 ビトリアの様子は日中のような気だるそうな気配はなく。姿勢もフラフラせずきっちりとしており、ボサボサだった髪を後頭部でまとめてポニーテイルにしている。

 まるで日中とは別人のようだった。

「お前・・・外の仲間のところに行ったのじゃないのか」

 ビトリアは前髪を掻き上げるとケールを睨みつける。

「外の敵は任せたの。あんたを殺すためにね」

 口調も気だるそうではなくハキハキと喋っている。本当に同一人物なのか疑いたくなる。

「それが本当のあんたってわけ・・・今までは演技だったのかしら!!」

「あたし低血圧なのよ。もっと上品に喋ったら、下品な面になってるわよ」

 嘲笑するビトリアにケールは突進する。短刀で喉元をかき切るつもりなのだろう。

 しかし、ビトリアは動かなかった。

「もらった!!」

 ケールの短刀が刺さりそうになった次の瞬間ーー

 グサ、と鈍い音がした。

 ビトリアのランスがケールの腹を突き刺したのだ。

 しかし、腹を貫通したのにケールは笑っていた。

「殺したと思ったでしょ・・・残念だったわね。私は生命力強化のレプリカを持っているの!!これぐらいなら死なないわ」

 ビトリアに見せつけるように右指につけた指輪を見せようとするがケールはある異変に気づいた。

 自分の手がカラカラのミイラのようになっていることに。

「な、な、なによこれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 よく見ると貫かれたランスが鼓動を打つように脈打ち赤い血管ような筋が怪しく光っている。

「へーそうなのね。そんなものなければ楽に死ねたのにね」

 ビトリアは氷のように冷たい目でケールの驚愕した表情を嘲笑う。

「このブルートランスは血を吸うのよ。相性も運も・・・あなたにはなかったわけ」

 ビトリアが言葉を告げる前にはケールはカラカラのミイラになっていた。恐らく声も届いていないだろう。

 ビトリアがブルートランスを引き抜くと微かにケールがピクピクと動いた。

「さすが生命力強化のレプリカね。生命力をゴキブリ並にしてくれるとは、あなたにピッタリ」

 ビトリアはキーレに近づくとブルートランスを床に置き、目の前で片膝をつき頭を下ろした。

 その姿はまるで主君に仕える騎士のようだった。

「我が主人よ。危険晒してしまい申し訳ありませんでした」

 頭を下げながらあやまるビトリアに涙をキーレは涙をふき首を横に振った。

「そんなことないです。ビトリアがいなかったら私は・・・今頃」

 ビトリアは顔を上げニコッと笑う。その顔つきは先程までケールに向けていた冷たい表情とは逆に、先ほど戦っていたとは思えないほどの爽やかな笑顔で。

「我が主人よ。これで私の仕事は終わりました。ですがもし・・・また助けが必要な際は申してください。一番にこのリケイル・ロックダイスが駆けつけます」

 優しく微笑みながら語りかけるリケイルにキーレは緊張の糸が切れたのか、はたまた幼い年で暗殺者に狙われる恐怖から解放されて、安心したのか大粒の涙を流して泣き始めた。

 それをリケイルはただ黙って抱きしめるので合った。

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