死霊術師の戯れ
三人の緊張を吹き飛ばすように夜風が吹いた。
目の前にいるのはレゲンとアルファスを殺しにきたという男、オリバーは手にメスのような物を持ち虚な目で二人を見ていた。
レゲンが腰に下げたクリスタルを抜こうとするとアルファスがそっとレゲンのクリスタルに手を添えて静止した。
「ここは私にやられてください」
そう話すとアルファスは自身の腰に下げた剣を引き抜いた。刃こぼれなく、鏡のように反射するアルファスの剣は月明かりを反射させ輝いて見えた。
「貴方にお見せしましょう。ミサハ式剣術を・・・・・・」
「きぇぇぇぇぇぇぇ!!」
オリバーが奇声を上げてアルファスにメスを振り上げるがアルファスはその場から動こうとしなかった。
ただ二振り剣を振るった。しかし、その剣はほぼ同時に振るわれたように見えた。そしてオリバーの身体は三つに裂かれ地面に転がった。
「すごいです・・・・・・アルファスさんこれがミサハ式剣術ですか」
レゲンは驚いた表情でアルファスを讃えるがアルファスは眉間に皺を寄せていた。
「・・・・・・おかしい」
「おかしいとは何がですが?」
アルファスは地面に転がったオリバーの死体を見つめていた。
「斬った感覚が鈍すぎる。まるで始めから腐っていた肉を斬ったようなそんな感覚だったんです」
「・・・・・・腐ったような?」
アルファスとレゲンが話していると遠くから「おーい」と声をかけて誰かが駆け寄ってきた。
カレッジとエメリア、そしてエメリアに抱えられたアンナが駆け寄ってきた。
アルファスはアンナにオリバーの死体を見せないようにオリバーの死体の前に立ち自身の後ろに隠した。
「ハァハァ・・・・・・よかった無事でしたか二人とも」
「何をそんなに焦っているのですかエメリアさん?」
「だってネクロマンサーが!!」
「ネクロマンサー?オリバーさんならここに」
アルファスはカレッジとエメリアに耳打ちすると二人に後ろにあるオリバーの死体を見せた。
「うわーこりゃ派手にやったな」
「違うんですよ。オリバーさんはネクロマンサーじゃないんです。すでに操られてたんです」
「・・・・・・どういうことですか?」
アルファスとレゲンはエメリアの言葉に疑問と恐怖を感じたしかし、二人が浮かんだその疑問への解答はアンナが答えた。
「お姉ちゃんを殺したのはおじいちゃんなの。私村のはずれのお墓で見たの。おじいちゃんがお姉ちゃんを殺して死体になったオリバー先生に話しかけてるところ」
アンナの言葉にアルファスとレゲンは背筋を凍らせた。そして後ろにある気配に気がつくのが遅れてしまった。オリバーの斬られた身体が元どおりに再生し、アルファス目掛けてメスを振り上げていることを。
「くっ!!」
アルファスは手の甲でメスを塞ぐが手の平をメスが貫通した。
その隙にレゲンはオリバーの首を落とした。オリバーの首は床に落ち切り口から赤い結晶が形成された。
「こんな小娘に私の正体がバレるとはやはり入れ替わった時に始末するべきだったな」
地面に落ちたオリバーの口が喋り出した。虚な目で喋るその姿は自分の意思で喋っているとは言えず誰かに喋らされているようだった。
「お前がフェクネスだっんだな!!今どこにいやがる」
カレッジが言葉を嘲笑うようにオリバーの頭は不気味に笑った。
「全くオリバーを犯人にして、はいめでたしだったのに残念だ。貴様らとこの村には消えてもらわなければなぁ」
「う〜」
村の暗闇の中から何がうめくような声がした。そしてその声は段々と増え、鼻につくような死臭が漂ってきた。
「君たちにプレゼントだ。受け取ってくれたまえ私のコレクションたちだ」
周りを数百のゾンビに囲まれていたのだ。鎧を着たものや、女性、男性、子供など数多のゾンビがカレッジたちを囲っていた。
「さぁ君たちも私のコレクションになってくれ」