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ナイトパーティー  作者: 内山スク
6章 ネクロマンサー編
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空虚な人生

目的のない人生などただ腐敗していくだけ

目的がなくなった僕の残りの人生は

墓標を探す空しき灰色の旅路

 村長の話を一通り聞いた後日が暮れてきたため、カレッジ達はこの村に泊まることになった。村に空き家があるためカレッジ達はそこに一晩泊まることにした。

「しかし、エメリアはどこに行ったんだろう?村長の家に行ってから見ないけど」

「大丈夫だリケイル。エメリアなら風の探知も使えるし、日が暮れて帰ってこなかったら俺が探しに行ってくるよ」

 カレッジとリケイルが話している最中、アルファスは一人ドアを開けると外に出た。

 村の様子は静かなものだった。オレンジの色の日差しが消えようとしている。その明るさが消えるように村の中も静寂に包まれていく。

 そして日が暮れてあたりが暗闇に包まれる。あたりを照らす光は満月の光と家の中から見える蝋燭の光のみ。

 アルファスは外で夜空を見ていると家のドアが開いた。カレッジが出てきたのだ。恐らくエメリアを探しにいくつもりなのだろう。

「エメリアさんを探しに行くのですか?」

「あぁ。アルファスあんたは?」

「私は星を見ながら夜風に当たっています」

「そうか。気まずいなら気まずいって言えばいいじゃないか」

「・・・・・・気づいていましたか」

「あぁレゲンとリケイルに後ろめたい気持ちがあるんだろ」

「えぇ、彼らの父親を奪ったのは私です。私も父親になってようやく自分の犯した罪の大きさに気づくとは愚かなものです」

「リケイルは気にするような奴じゃないが、レゲンはな・・・・・・リゲインさんを超えることが目的だったからな」

「リゲインさんを?」

「レゲンは真面目で我慢強いからな。リゲインさんが守った国を守るために頑張ったのに、俺たちに付き合わせたし、あんたを見て抑えてた気持ちが爆発したんだろう」

 カレッジはどこか申し訳なさそうに目線を下に逸らすと髪を掻きむしった。

「レゲンは別に怒ってないさ。ただ・・・・・・気持ちの整理がついていないだけさ」

「・・・・・・そうですかね」

「きっとそうさ。話してみればわかるさ。じゃあ俺はエメリアを探してくるから」

 話し終えるとカレッジはアルファスに手を振りながら村の方向へ走って行った。

 カレッジが暗闇の中に消えていくと再び家のドアがゆっくりギィと開いた。

 アルファスが視線をドアに向けるとそこにはレゲンが立っていた。

 レゲンは何も話すことなくアルファスの横に立った。アルファスは驚いた表情を浮かべつつもレゲンが口を開くのを待つようにただ黙って星を見続けた。

「・・・・・・父は・・・・・・リゲイン・ロックダイスは強かったですか?」

 レゲンがふと呟いた。アルファスはその言葉を聴くとレゲンを見ずに星空を見ながら静かに答えた。

「えぇ強かったですよ。私が出会った騎士の中で一番強く、一番勇敢な人だった」

「・・・・・・そうですか」

 再び二人の間を静寂が包んだ。フクロウの鳴き声と虫の鳴き声が混ざる中、二人はただ並んで星空を見続ける。

「父さんは僕の目標でした。父を超えたかった。そして認めてほしかった」

 レゲンの言葉をアルファスは静かに聴いていた。それを察するかのようにレゲンも語るように言葉を紡ぐ。

「父が死に国を守れば父の意思を守ることにつながると思っていました。けれど国を守ることもできなかった。僕の人生は空虚になっていきました」

 レゲンが力強く拳を握った。悔しさと後悔を握りつぶすように。

「国を滅ぼしたことを後悔してないと言ったら嘘になります・・・・・・けど先輩たちを恨んではいません。自分が行ったことを後悔して生きていては姉さんに心配をかけるし父にも顔向けできません」

 レゲンは拳をゆっくりと開くと吹っ切れたように笑みを見せた。

「僕は気付かされました。一人で戦っているわけではないことを、苦しみながらも生きなければならない理由があることを・・・・・・」

「・・・・・・その理由とは?」

 アルファスが聴くとレゲンは真っ直ぐアルファスの顔を見て答えた。

「仲間が悲しむ顔を見たくないからです」

 レゲンの言葉を聴いてアルファスは笑みを見せた。

「素晴らしい目的ですね。父上も貴方を誇りに思うでしょう」

 二人は話し終えると再び星空に目線を戻した。そして静かに星を眺めていると土を踏み締める足音が聞こえてきた。

 二人が目線を目の前に向けると一人の男が立っていた。

 雪のように白い肌、整えられた服装、横に流した艶やかな黒髪で死体のように生気を感じない。

「貴方は?」

 アルファスが問いかけると男は丁寧にお辞儀をした。

「村長からお話を聞いてきました。この村で医者をしているオリバー・オリットと申します・・・・・・貴方達を殺しにきました」

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