騎士VS暗殺者その2
エメリアは影の暗殺者と距離を取り戦っていた。カレッジに言われたとおり逃げに徹するためだ。
地面に影が蛇が這いずるように左右に体を揺らしながら移動しエメリアに迫ってくる。
「はぁぁ!!」
エメリアは風の刃を大きく振ると影に向かって突風が吹き荒れる。
「チッ!!またか」
影の中から男が怯んだようにペリペリと引き剥がされる出てくるが、風がやむと再び影の中に戻る。
エメリアはカレッジから言われた通りこの戦法を二回使っている。
カレッジと別れてから三回目の魔法を使用している。
「ハァハァ・・・後一回しか使えない」
エメリアは走りながら逃げつつ、カレッジの元へ走る。だが影のスピードが早く、再び距離を詰められた。
「くっ!?」
エメリアは再び風の刃を放つために剣を大きく振るう。
しかし、影は急に真横に九十度に曲がった。
放たれた突風がこの葉を舞い上げる。
風の刃を避けられた。もう攻撃手段がない。
短刀を持ちながら影から男が出てきた。
「これで終わりだぁぁ!!」
もう少しでエメリアに短刀が刺さりそうなその時。 ドンっという重い音ともに木の葉が上空に舞い上がった。
上空からカレッジが落ちてきたのだ、そのまま影の男の腹を重力に任せて勢いよく剣で突き刺した。
「グバァ!?」
影の男はカレッジの体重と重力による衝撃か血を吐き人形の糸が切れたように倒れた。
カレッジは男の上からと退くとエメリアに優しく微笑む。
「ちゃんと、言いつけ守ったな。よく頑張った」
「ハァハァギリギリでした・・・けど」
緊張の糸が切れたのか、安堵するエメリアを気遣いながらも影の暗殺者を運び、鎖の暗殺者が倒れている場所へ戻った。
影の男を鎖の男の元へ運ぶと、カレッジは鎖の男の鎖を巻いて二人を縛り上げると二人を叩き起こした。
二人の暗殺者は傷の痛みからか動けないようだった。
「お前らの雇い主は誰だ?」
カレッジの言葉に鎖の暗殺者は口角をつりあげる。
「・・・まぁ負けたことだし、教えてやろう。雇い主は盗賊騎士団の団長さ」
「なぜ、貴族を暗殺する?金が目的か」
「さぁな、そこまでは知らん。新しい拠点が欲しかったんじゃないのか」
カレッジは顎に手を当て少し考えると、鎖の暗殺者はなぜか不敵に笑みを崩さない。
「まぁ、負けはしたが、任務は・・・まだ終わっていない。屋敷にはもう一人仲間が潜入している。お前らをここに誘き出したからなぁ・・・俺たちの任務は終了だ」
鎖の暗殺者の言葉にエメリアは焦りだし、わたわたし始めた。
「まずいですよ師匠。すぐ屋敷に戻らないと!!」
「知ってるさ」
カレッジがエメリアの言葉を塞ぐように言葉を被せる。
暗殺者もエメリアもカレッジの言葉を信じられないように驚きの表情を見せた。
「お前らにもう一人仲間がいることも知ってるさ。だから、あいつを屋敷に残してきた」
「何!?雇われた傭兵というのはお前らではないのか!?」
「お前らの情報伝達を防ぐのもリケイルが仕組んだ作戦な訳さ」
驚愕する鎖の暗殺者をよそ目にカレッジは不敵な笑みを暗殺者たちに向けるのであった。