輝きを失う結晶
ミサハ王国王宮の地下には下水が流れている。その下水路を三人の男女が歩いていた。
レゲンとリケイル、そしてエメリアだ。
「アイスノックさんとシオンさんは地上で惹きつけてくれてるみたいですね」
「大丈夫ですかね。二人ともミサハ王国の兵士を二人で相手にするのはつらいんじゃ・・・・・・」
「大丈夫よ。あたしもレゲンくんも戦場で体験してるし、シオンもアイスノックそれぐらいでくたばるほど弱くないわ」
心配するエメリアに気を使ったのかリケイルが声をかけるとエメリアは笑顔を見せた。
「・・・・・・この上ですかね」
レゲンは立ち止まると真上を見上げた。そこはなんの変哲もない石の天井だった。
「姉さんお願いします」
「オッケーお姉ちゃん頑張るからね」
そう話すとリケイルは自身の右腕につけた黒いブレスレットを掴んだ。
すると黒いブレスレットは粘土のようにぐにゃぐにゃと形を変えて、リケイルよりも一回り大きいランスに形を変えた。
リケイルは手に持ったランスを自身が立つ下水路の天井に力強く突き刺した。天井は一突きで崩壊し破片が雨のように降り注いだ。
しかし破片はリケイルたちには当たらなかった。エメリアが風魔法で自分達に当たらないように風の膜で塞いだからだ。
崩した天井から上に登ると石壁でてきた廊下が広がっていた。窓からは植物が生えた中庭らしきものが見える。
「無事潜入成功ですね」
「早く師匠を探しましょう」
「まぁまぁそう焦らず探しましょう。エメリア」
三人が話していると破壊音を聞いてきたのか足音が廊下の角から聞こえてきた。足音は早足でこちらに近づいている。
レゲンは腰から自身の剣であるクリスタルを抜き構え臨戦態勢に入った。
リケイルもエメリアを庇うようにエメリアの前に立ちブルートランスを構える。
そして角から人影がみえた瞬間レゲンは剣を振るった。剣は煌めきながら横に一閃を描くがレゲンの剣からは硬い感触しか伝わらなかった。
レゲンの剣は剣で受け止められたからだ。
受け止めたのは顎髭を蓄えた初老の男性だった。しわしわの手からは想像もできないほどの力でレゲンの力に押し負けることなく剣を受け止めている。
「お前は!?」
レゲンが驚きの顔を見せると初老の男も顔をしかめてみせた。
「君は確かリゲインの・・・・・・」
レゲンが剣を納めることなく力を強めると初老の男性の裏からカレッジがヒョコと顔を出した。
「あれお前ら何してるんだ?」
「カレッジ!?」
「師匠!?」
「先輩!?」
三人が驚きの表情を浮かべるとカレッジは頭を掻きながら角から出てきた。
「カレッジあんた捕まったんじゃなかったの?」
「あぁなんか依頼があって王が俺を呼んだらしい」
「なんだ・・・・・・無事だったんですね師匠」
リケイルとエメリアが安堵の表情を見せる中、レゲンは初老の男アルファス・クレアニムを睨みつけ、剣を納めようとしなかった。
「先輩・・・・・・なんでこの男と一緒にいるんですか?」
「あぁこの人はミサハ王から使いだって。依頼の内容は後で説明するからまずは街の騒ぎを収めないと・・・・・・外で戦ってるのはアイスノックとシオンか?」
「この男が何をしたか知ってるんですか!!」
声を荒げるレゲンを見てカレッジやリケイル、エメリアは困惑した表情を見せる中、アルファスは悲しそうな表情を見せていた。
「この男は・・・・・・僕の父・・・・・・リゲイン・ロックダイスを殺した男です」