落雷のように衝撃的で 雷に打たれたように熱く
一人の女性が屋根の上を走っていた。ショートヘアーの艶やかな黒髪にエメラルドのように綺麗な色をした目、そして手には白い弓を持っていた。
シオン・レイダーツは空を掴むと手の中に稲妻が集まるようにバチバチと音を立てて手の中に青白い矢が生成された。
その矢を弓に込めると路地に矢を放った。放たれた矢は路地にいたミサハの兵士たちの足元に突き刺さると矢の形を崩して激しく稲妻を放った。
痺れたように地面に倒れるミサハの兵士を確認すると屋根の上を走り抜け別の兵士を探す。
そんなことを繰り返していると目の前に一人の男がシオンの目の前に立ち塞がった。
紫色の鎧を身につけ、長い髪を後ろにまとめた女のような男だった。両腰に剣を下げ手を後ろで組みながらシオンに対して作り笑いを浮かべていた。
「ごきげんようシールの騎士団長様。私はロード・ナイフと申します。ぜひお見知りおきを」
丁寧にお辞儀するロードにシオンは矢を装填した弓を向けた。
「退きなさい。貴方に構ってる暇はないの早くカレッジを助けなきゃいけないんだから」
「それは愛ゆえにですか」
「な!?」
動揺するシオンを見てロードはニコリと笑みを作ってみせた。
「我々も情報を集めていますからね。貴方がカレッジ様を助けるからには仲間というには動機が薄いような気がしますし、愛ゆえにかと」
顔を真っ赤にしていたシオンであったがロードの言葉を聞くと冷静さを取り戻したように真剣な表情に変わった。
「確かにカレッジに対して愛はあるわ。だけどそれだけで動機にはならない・・・・・・私の仲間が捕まれば誰であろうと助けに来るわ」
「・・・・・・そうですかそれは失礼いたしました」
ロードは話し終えると両腰の剣を抜いた。そしてそのまま剣をシオンに投擲した。
シオンは投擲された二本の剣を華麗に交わすと剣はそのままロードの元に帰ってきた。
そのままロードは剣を手に掴むと再びシオンに向けて投擲した。
「さすがですね。ミサハ流投擲術を交わすとは」
「不意打ちとは卑怯な」
話ながらも剣を交わし、弓を構えてロードに矢を放とうとするが体勢が悪くロードに狙いが定まらない。
「くっ。狙いが定まらない」
「どうしました?シールの騎士よ。避ける姿は美しいですがそれでは私を倒せませんよ」
シオンは苦し紛れからか装填した青白い矢を弓から放った。しかし矢はロードの方へとはいかずに上空は飛んでいった。
「どこを狙っているのですか!!それではダメですね」
ロードは自身に飛んできた剣を掴むとそのままシオンに斬りかかった。シオンは前からロードに後ろからはロード目掛けて帰ってきた剣に挟まれた。
シオンは背中の矢筒から矢を取り出すとロードの肩に矢を突き刺した。
「くっ!?」
ロードが痛みで怯んだ隙をつきロードの肩を掴むと肩に置いた手を支えにしてそのままロードの頭の上を飛んでいった。
そのままロードの背中に回り込むとロードから離れるように距離をとった。
ロードは飛んできた剣を掴むと後ろを振り返った。
「どうしました?離れては私を仕留められませんよ」
「いいえもう勝負はついたわ」
「なんと?」
「勝負はついたと言ったの離れたのは貴方に近づくと危ないから」
シオンは人差し指で天を差した。ロードは指の方向を見てみると頭上には黒雲が生成されていた。
黒雲は中に雷を溜め込んでいるのかゴロロと音をたてながら停滞していた。
「あれはさっき私が上空に打ったサンダーロアーの矢が当たった雷雲。そして・・・・・・」
シオンは再び指を差した。その方向にあるのは先ほどシオンが突き刺した矢。つまりロードの肩に突き刺さったままの矢。
「その矢を目指して落雷は降るわ」
「しまった!?」
ロードが矢を掴むがもう遅かった。上空からの落雷はロードが矢を抜くよりも早くロードに落ちた。
「ガッァァァァァァァァァァァ!!」
ロードは黒焦げになるとフラフラとしながらもなんとか立っていた。
「さすがですね・・・・・・貴方が彼に向ける愛のように伝わりましたよ。その愛がいつまでも続くといいですね」
そう言い残すとロードは黒焦げになった身体で屋根から地面に落ちていった。
シオンは静かにそれを見届けると一言だけロードに呟いた。
「いつまでも続くわ。あの人がいなくならない限りね」