戦うための拳
アイスノックはミサハの兵士たちに囲まれながらもミサハの兵士たちを殴り倒していた。
メタモルフィアを身に纏ったアイスノックの拳はミサハ兵の鎧を簡単に歪めてしまった。まるで粘土が凹むように鎧が形を変える。
「オラッ!!」
また一人の兵士を殴り倒してはまた次の兵士を殴り倒す。これの繰り返しである。
「クソ・・・・・・十分時間稼いだし引くか」
アイスノックがそう呟いていると建物の屋根の上から誰か飛び降りてきた。
シオン・レイダーツだった。シオンはアイスノックの後ろに着地した。
「シオンちゃん。兵士は減らせたのかい?」
「ぼちぼちよ。それとミサハの騎士団長が出てきたわよ」
シオンの言葉を聴いてアイスノックは目の前を見た。すると無精髭を生やした男が立っていた。黄緑色の鎧に身を包み籠手にはスパイクのような棘が生えていた。
「シオンちゃん。ここから離れた方がいいこいつ相手だとシオンちゃんを守りきれない・・・・・・」
「守る?バカ言わないで私はそんなに弱くないわそれに・・・・・・」
シオンはアイスノックに背を向けながらサンダーロアーに矢を装填した。
「本当に守りたいならあいつに勝つことね。貴方が倒れたらあいつと戦うのは私なんだから」
「違いないな・・・・・・ずいぶんと口が回るようになったなシオンちゃん」
シオンはそのまま建物の屋根に飛び移るとそのまま屋根の上を走り去っていった。
残されたアイスノックはただ目の前の敵を見据えていた。
「ミサハ王国が騎士団長・・・・・・マグナ・ルミナス・・・貴様に決闘を申し込む」
「ほう・・・・・・その決闘受けようマグナ」
マグナはニッと口角を上げると拳を構えファイティングポーズをとった。
「貴様らは・・・・・・手を出すな」
マグナの言葉にアイスノックの周りを囲んでいた兵士達は静かに二人の決闘を見守っていた。
そしてアイスノックとマグナは力強く握り拳を作るとお互いに目掛けて殴りかかった。
二人の拳はお互いの顔面にクリーンヒットした。しかし、二人は笑っていた。
顔面からお互いに拳を離すとお互い激しく殴り合った。腹に強烈なパンチ入ることや、肩が外れるそうなストレートなどお互いの拳が激しくぶつかり合っていた。
アイスノックはメタモルフィアを纏っていたが何故かマグナの拳に殴られるたびに辛そうな表情を浮かべていた。
「痛かろう?俺の・・・・・・ミサハ式拳闘術は」
「ミサハ式拳闘術なんだそりゃあ?」
「拳から風魔法を発生させ・・・・・・相手の内部にダメージを与える・・・・・・」
「なるほどね・・・・・・しかし」
アイスノックは拳を振りかぶるとマグナの顔面に重い一撃を繰り出した。
「先にお前を倒しちまったら関係ないだろ?」
マグナ顔は鼻血が垂れ、唇が切れ血が滴り落ちるが狂気的な笑みを浮かべ再びアイスノックに再び拳をぶつける。
アイスノックも鎧の中で不適な笑みを浮かべるとマグナに応えるように拳をぶつけた。
二人は激しく殴り合った。アイスノックの拳がマグナの皮膚や骨を傷つければ、マグナはアイスノックの内部にダメージを与える。
そしてお互いに息を切らし始めると最後の力を込めるように拳を放った。
ガッという音が街に響いた。
お互いに顔を狙った打撃を放ったのだ。
しかしマグナの拳はアイスノックには届かなかった。それとは反対にアイスノックの拳はマグナの顔面にクリーンヒットしていた。
マグナはよろめくと静かに地面に倒れた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
アイスノックは両手を天に上げ雄叫びを上げた。
街中に勝利したことを知らせるように大声で叫ぶと再び周りを囲っているミサハの兵士たちに、呼びかける。
「さぁ次にかかってくるのは誰だ?女を守っている俺はいつもの百倍強いぞ!!!」
朱色の鎧の下を血だらけにし、骨が軋む音をたてながらもアイスノックは嬉しそうに笑っていた。