宣戦布告
ミサハ王国の城下町。石のタイルで貼られた道が王宮へ続いている。周りには住居や店が道に沿って並んでいた。
ミサハの住民たちは買い物を楽しむ者や、店で食事をする者など王国の城下町なだけあって治安の行き届いた平和な日常だった。
しかしそんな平和な城下町に一人の男が道の真ん中で仁王立ちしていた。
黒い髪をオールバックにした美形な容姿、白いスカーフを首元に巻いた屈強な男。手首まで覆う手袋を両手につけていた。その男の目線の先にはミサハ王国の城が写っていた。
「さて・・・・・・やるか」
男はそう呟くと息を大きく吸い込んだ。そして男は吸った息を吐き出すように咆哮のような大声を城に向かって叫び始めた。
「ミサハ王国よ!!シール王国騎士団長シースルー・アイスノックが貴様らの国を落としに来たぞ!!!!」
アイスノックの咆哮にも似た宣戦布告は国中に響き渡った。周りの住民が逃げ惑う中アイスノックはただその場で腕を組み堂々とした姿勢を崩さず動かなかった。
しばらくするとミサハの兵士数十人が四方八方アイスノックの周りを取り囲んだ。
兵士たちが槍をアイスノックに向ける中、アイスノックは静かに口を開いた。
「貴様らミサハの兵士どもにはもったえないが特別に教えてやろう。メタモルフィアの本当の使い方を!!」
アイスノックは自身の手袋を脱ぎ捨てるとその中からは朱色に透き通った右腕が姿を現した。正確には無理矢理右腕の形にした宝石のような物とでも言うのだろうか。
そしてアイスノックは右腕を天高く掲げた。
「メタモルフィアの本当の使い方はメタモルフィアに俺自身の形を与えることだ!!」
すると朱色でできた右腕から液体のような物が垂れてきた。まるで溶け出した氷が水となり滴り落ちるように溶け出すと、アイノックの身体を包み込んだ。
そして液体はアイスノックの身体を覆うと氷のように固まり鎧のような姿を形成した。
ミサハの兵士たちは槍でアイスノックを貫こうとするが朱色の鎧が貫くことを許さなかった。
槍は鎧を貫くことなくピタリと止まった。
そして鎧から四方八方を貫くように棒状のような物がハリネズミのように飛び出した。
取り囲んだ兵士たちは住居や壁に叩きつけられ意識を失ったのかぐったりと倒れ込んだ。
しかし兵士が倒れるとすぐに他の場所から兵士が集まりアイスノックを取り囲む。
「やれやれ、きりがないな」
アイスノックがそう呟くと自身の顔に何か勢いのある硬い物が衝突するような感触を感じた。
コツンと音を立てて地面に落ちた物を確認するとそれは矢だった。城の城壁から狙撃されたのだ。
「狙撃手までいるのか・・・・・・まぁ俺のメタモルフィアは矢も魔法も通さんがな」
アイスノックは矢の飛んできた方向を確認するために城壁に目線を向けるが、次の瞬間矢に注意する必要ことがないことを理解した。
なぜなら先ほど矢が飛んできたあろう、城壁の場所が放電したような電撃に包み込まれたからだ。
シオンのサンダーロアーが城壁にいる狙撃手を仕留めだのだ。
「張り切ってるねぇシオンちゃん。こっちは誘導だってわかってんのか?」
アイスノックはニヤリと笑うと周りを取り囲む兵士に目線を戻した。緊張しているのかその場で槍を構え動かない兵士を見てアイスノックは一言言い放った。
「どうした?ミサハの騎士共よ!!このシールの騎士を討ち取り武勲をあげてみせよ!!」
数に臆することなくシールの騎士はまるで獣のようにミサハの兵士を薙ぎ倒していくのであった。