我らが目的の為に
山の中木々が生い茂り木漏れ日が森の中を照らしていた。
そんな森の中を一人の男が歩いていた。ガロン・バレルだ。彼は手の中で金色の小石のような宝石を転がしていた。
ガロンはある程度歩くと立ち止まった。目の前に人が立っていたからだ。
「取り返しましたか。ガロンさん」
「あぁてめぇが腑抜けた奴にハイレプリカ渡すから取り返してやったぞ・・・・・・ルイ」
ルイは目を細め笑みを作って見せた。しかしその笑みはどこか怪しく見える。
ガロンは手の中にハイレプリカをルイに投げつけるように渡すとルイはキャッチしてから手の中の金色の石を確認してから懐にしまった。
「えぇ確かに・・・・・・ハイレプリカですね。ありがとうございますガロンさん。これで主人のために計画を進められます」
「主人ってあの悪魔付きの姫さんのことか?」
ガロンが言葉を言い終えると同時に首筋に血が汗のように滴り落ちた。ガロンの首筋にルイが剣を押し当てていたからだ。
剣の刃はガロンの首の皮を切り裂き、後一センチ剣を動かせばガロンの首から綺麗な血飛沫が吹き出すことになるだろう。
「姫様を侮辱することは許さん・・・・・・訂正しろガロン・バレル騎士団長・・・・・・」
ルイの顔は先ほどまでの貼り付けたような作り笑いが嘘のように怒りで満ちており今にもガロンの首を切り落とすと言いたそうな表情をしていた。そんなルイの顔を見てガロンはヘラヘラ笑って見せた。
「・・・・・・へぇ。そんな顔出来んだな。お前と剣を打ち合っても何も感じなかったが今ならお前の気持ちがわかるかもな」
二人の間に緊張が走った。ガロンが自身の腰に下がったレイピアに手をかけようとしたその時。
「はいはい二人ともそこまでですよ」
突如鳥のような美しい声が森の中に響き渡った。声の主は水色の鎧を身につけ、青い瞳をした女性だった。腰には剣を携え二人の間に割って入った。
「なんだケルス来てたのか」
「なんですか?来ては悪かったですか?」
「いや怖い女が来たなと思っただけだ」
「こんなことになると思ったから来てあげたんですから感謝してほしいですよ」
ケルスは二人の間に入るとルイの剣を素手で触ると下に下ろしてみせた。剣を素手で触ったにも関わらずケルスの手からは血が一滴もでていなかった。
「・・・・・・そうですね。私も熱くなりすぎました。今回のハイレプリカを取り返していただいた件もありますし今回は聞かなかったことにしましょう」
そう言うとルイは剣を下に下げた。それを見届けるとガロンも自身の手をレイピアの柄から離した。
「よかったですねガロンさん。見逃してもらって」
「へ、邪魔しなくてもよかったんだけどな」
ケルスとガロンがそんな会話をしている中ルイは自身の剣で空間を切り裂いた。
空間は水面に石を投げ入れたように波紋状に広がり先ほど切り裂いた部分が裂かれるように空間が割れた。
「さぁ帰りましょうか。我々の王国に」
ルイとガロン、ケルスは裂けてできた空間の中に入っていくと裂けた空間はまるで何事もなかったように元に戻った。
まるでその場所に始めから何もなかったように・・・・・・