冷めた刀身
「ハァハァハァ」
暗闇に包まれた通路を息を切らして走る者がいた。カルド・リードマンだ。頬や肩などに焦げた後や火傷傷があり、相当なダメージを負っていることが見た目でわかる。
「くそ、流石にやるな二対一では分が悪いな。部下もやられたし集めたお宝を持って態勢を立て直すか」
カルドは通路を真っ直ぐ走ると木でできたドアを開けた。そこには獣の皮や剣や鎧、中央に宝箱のような箱が置いてあった。部屋の隅には蝋燭が置いてあり部屋全体をうっすらとした光が照らしていた。
カルドは宝箱の鍵をポケットから取り出した鍵を使って開くと中には大量の金貨と宝石が入っていた。その中の宝石を一つ手に取った。
その宝石は夜明け前の光のように明るい金色に包まれていた。
手のひらに収まるほどの金色の小石のような形をしていた。その金色の石をうっとりとした目でカルドは眺めていた。
「苦労して手に入れただけはある。あの放浪の剣士クセス・タミラから殺して奪ったからな・・・・・・金色の宝石など珍しいし高く売れるだろう」
「ほう。そこにあったのかハイレプリカは」
突然後ろから声がしたため振り返ると、そこには中年の男性が血がびっしりとついたレイピアを持って立っていた。
「貴様もあのシールの騎士の仲間か!?」
「シールの騎士?なんだそりゃ?それよりそのハイレプリカ返してもらうぜ。知り合いに頼まれてるんでな」
カルドは警戒するように腰の剣を引き抜いた。蜃気楼のように揺らめく刀身でレイピアをもった男に切りかかった。
カルドの刀身をレイピアで受け流そうとしたその時、パキンという音があたりに響いた。
「おっと・・・・・・」
レイピアはカルドの剣の刀身にあたる前に折れたように見えた。レイピアで衝撃を受け流す前に揺らめく刀身がレイピアを折ったのだ。
「ふっ。残念だったなそんな細い剣で俺に勝てると思ったのか?」
勝ちを確信するカルドに中年の男は折れたレイピアを見てニヤリと笑った。
「やっぱり使い慣れたレプリカを持ってくるべきだったな・・・・・・ならいいだろう。このガロン・バレルがお前のような腐った悪に特別に見せてやろう!!もう一段階進化した魔法というやつを」
「なに?」
ガロンの周りを冷たい空気が包み込んだ。部屋に置いてある鎧や動物の皮が凍りついた。気がついた頃にはカルドの吐く息が白く視認できるようになっていた。
まるで氷海に入れられたような、まるで巨大な氷塊に閉じ込められてしまったようなそんな寒気をカルドを包んだ。
「なんだこれはレプリカか!?」
「レプリカ?違うこれは魔法だ・・・・・・水は冷え固まり形を成す。水魔法が進化した氷魔法さ」
「氷魔法だと!?」
カルドが驚愕していると先ほど折れたレイピアの刀身から氷が折れた刀身を治すように刀身を形成していった。
「聞いたことないぞ!!そんな魔法」
「言ったろ。魔法の進化だとな」
ガロンはそう言うとレイピアで素早くカルドの喉元目掛けて突きを放った。
カルドの喉元にコインほどの穴が空いた。そこから血が溢れ出すとカルドは声を発することなく静かに地面に倒れた。
ガロンは地面に落ちた金色の小石を拾うと自身のポケットにしまった。
「よし任務完了っと」
ガロンはそう一言言い残すと凍りついた部屋を後にするのであった。