目に見えない武器
我々は心に剣を携え進み続ける いつ折れるかもわからずに
カレッジとエメリアは洞窟の中を進んでいた。山賊を薙ぎ倒しながら。
「これで何人目だ?」
山賊のみぞおちをブレイドの持ち手をおもいっきり叩きつけながらエメリアに問いかけた。
倒れた山賊を見届けるとエメリアはカレッジの後ろをついていく。
「これで三十人目ですね。沢山出てきますね」
「俺たちの道はハズレだったかもな」
山賊を薙ぎ倒しながら洞窟の奥に進み続けるが一向に山賊長が出てきそうにない。
暗闇を進み続けながら五分が経過した。狭い通路から広い空間に出た。天井からは滝が流れており、ツタや苔が壁の岩を覆っている。
そんな広い空間の真ん中に豪華な椅子が飾ってあった。そしてその椅子にふんぞりかえるように男が座っていた。目つきの悪い無精髭の男だった。腰には剣を携えており、鉄と獣の皮を混ぜたような鎧を身につけていた。
「よく来たな。部下をこうも簡単に倒すところを見るに強いな貴様・・・・・・このカルド・リードマンがお相手しよう」
カルドは椅子から立ち上がると腰の剣を引き抜いた剣は蜃気楼ように刀身がゆらゆらと安定していない、存在があやふやになっているように見えた。
カレッジとエメリアを剣を構えるとカルドはあることに気がついたようにカレッジの剣を見た。
「貴様のその剣・・・・・・昔ミサハにいた頃戦場で見たことがある。貴様シールの騎士か!!」
「なるほどな。ミサハがなぜ手こずっているのか合点がいった・・・・・・元ミサハの騎士だな。どうりで捕まらない訳だ。ミサハ王め!!俺たちに後始末を押し付けたわけか」
カルドは大きく踏み込むとカレッジ目掛けて戸田さんしてきた。カレッジはカルドの剣を二本の剣で受け止めた。
「別にミサハの騎士だったから手こずっている訳じゃないさ。俺が強すぎるからミサハも焦ってるのさ」
「ほう・・・・・・じゃあ俺を倒せるかな?このシールの騎士をよぉ」
カレッジはカルドの剣を弾き返すと白い剣を振い斬撃を飛ばした。カルドは斬撃を叩き割るように涼しい顔で剣を振ってみせた。
「見えない斬撃・・・・・・ブレイドの能力だったな。だがそれでは俺は倒せんぞ!!ブレイドの本当の使い方を見せてみろ」
カルドの挑発を聞くとカレッジは急に黙り込んだ。両手に握るブレイドを力強く握り直した。
「まだ一撃防いだだけだろ。判断が早すぎやしないかそれは」
「師匠?」
エメリアはブレイドを力強く握るカレッジの姿を見て何か違和感を覚えた。しかしその違和感を問う前にカレッジはカルドに斬りかかるのだった。
キンっという音が洞窟中に木霊した。二人が剣を打ちつけあう音があたりに反射して聞こえてくる。
「チッ!!やるな。さすが山賊の長といったところか、それにあの剣の刀身が見えづらくて受け止めづらい」
カルドとの剣の打ち合いをやめて、間合いをとるように一旦エメリアの前まで後退するとカルドは自信満々に自身が待つ剣を見せつけた。
「俺の屈折のレプリカはそう簡単に攻略できんぞ!!さぁ本当の使い方を使え!!シールの騎士が相手ならばそれが戦いの楽しみという物よ」
カルドの言葉を受けるとカレッジは悔しそうに下唇を噛んでみせた。そんなカレッジを見てエメリアは声をかけた。
「師匠。早く勝負をつけるべきですよ。ブレイドの本当の使い方を見せれば決着つきますよね?」
「・・・・・・知らないんだよ」
「え?」
カレッジの小さな声にエメリアは思わずキョトンとしたような表情をしていた。
「・・・・・・本当の使い方は俺の師匠・・・・・・パワスも知らなかった。ブレイドは唯一本当の使い方がないオリジンシリーズなんだよ」
悔しそうな表情を浮かべるカレッジを見てエメリアはその言葉が真実であると理解した。
カレッジの声を抑えて話したため、今の言葉がカルドには聞こえていなかった。
「どうした?本当の使い方を見せてはくれないのか?なら奪ってから聞き出すとしよう」
カルドは再び勢いよく踏み込みカレッジと距離を詰めると蜃気楼のようにゆらゆらした刀身でカレッジを激しく斬りつける。
「どうした?こんな物かシールの騎士!!」
カルドの剣を防ごうとするが間合いがつかめない刀身にカレッジの皮膚はかすり傷を作っていった。
防戦一方かと思われたその時カレッジの後ろから突然突風が吹いてきた。
「なに!?」
突風を受けたカルドは大きく吹き飛ばされ岩壁にぶつかった。
エメリアが風の刀身から突風を発生させカルドに向けて放ったのだ。
「・・・・・・エメリア。お前・・・・・・」
「私だって戦えるんですから・・・・・・いい加減背中預けさせてください」
カレッジは少し笑みをこぼすと剣を構え、エメリアの隣に並んだ。
「よしエメリア!!二人であいつを倒すか!!」
「はい!!」
エメリアの力強い返事と共に二人はカルドに斬りかかるのであった。
カレッジが二刀の剣でたたみかけ、カルドが剣を振り払った隙を突いてエメリアが風でできた刀身をカルドに叩きつけた。
「くっ!?またか」
カルドは叩きつけられた風の勢いを殺さず再び岩壁に叩きつけられた。
「エメリア!!魔力量調整しろよ」
「わかってますよ。師匠!!」
エメリアとカレッジは手を突き出すとそれぞれ手の平から火魔法と風魔法を放った。
カレッジの火をエメリアの風が威力を上げる。そして周囲を包み込むように燃え盛りその炎はカルドを包み込んだ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カルドの断末魔が響きしばらくするとカレッジは開いた手を閉じて握り拳を作った。するとあたりを燃やす炎がパッと消えた。
焼け焦げた地面が広がっていたがカルドの姿はなかったカルドがいた岩壁には焼け焦げた鎧と人が一人分通れるほどの穴が空いていた。
「・・・・・・やられたな」
カレッジがそう呟くとエメリアは意味を理解できず首を傾げた。
「この穴から逃げたんですか?でもどうやって穴を開けたんですかね」
「あらかじめ穴を開けて逃げ道を用意してやがった。飛ばされる振りをして土魔法で通路の蓋を開けたってとこか」
「ここにさっきの魔法流してみますか?」
「いや・・・・・・やめとけ。生死が確認できなくなるし、罠かもしれないからな」
「そうですか」
カレッジは剣を納刀すると通ってきた洞窟の通路に戻り始めた。
「どこいくんですか師匠?」
「戻るぞ。敵は逃げたしな。ガロンと合流しよう」
「わかりました」
エメリアはカレッジに置いていかれないように駆け足でカレッジに近づくとカレッジは一言呟いた。
「弟子の成長も見れたしいい収穫だった」
「え!?なんか言いました師匠〜」
「別にただの独り言だ」
「え〜なんて言ったかもう一回言ってくださいよ」
「やだよ!!」
エメリアはニヤニヤとした笑みを浮かべながら肘でカレッジを小突くがカレッジは恥ずかしそうに口を閉ざすのだった。