別れ道
日が昇り始めた山の中、カレッジたちは山賊の拠点を捜索していた。暑い日差しが三人を焦がすように照らしていた。
「本当に山頂なんかにあるんですか?暑くて黒焦げになりそうですよぉ」
「山の中は日が当たって暑いからな体力が削られる。山に拠点を置く山賊たちにとっては有利なんだろうな」
三人はそんなことを話しながらも歩いていると山頂付近までなんとか到達した。近くには川が流れており魚の姿が視認できるほど綺麗な水だった。
「ここで休むか。敵の拠点も近いしな」
「それがいいな。嬢ちゃんも限界そうだし」
「うへ〜休憩だぁ〜」
三人は河原の石に座ると各々休み始めた。エメリアは自身の顔に風魔法で風を起こし涼んでいた。
カレッジとガロンはあたりを警戒するように周りを見渡し、微かな音を聞き取るため一言も喋ろうとしなかった。
するとガサっと草むらから音がした。音がした方向に向けてカレッジは白い剣を大きく振り払い斬撃を飛ばした。
「ぐわっ!?」
赤い血が一瞬飛び散るのが見えると野太い悲鳴と何かが倒れる音がした。音がした方向に三人は向かうと獣の鎧を身に纏った男が倒れていた。昨日倒した山賊たちと似たような格好をしている。
「ひぃー!!た、助けてくれよぉなんでもするからよぉ」
「お見事だなカレッジ。こいつに案内させるとするか」
「そうだな。山の中を彷徨うのも飽きた」
「どうしたんですか?師匠・・・・・・って山賊!?」
「おい、山賊お前らのアジトを教えろ。暑くてイライラしてんだ。早く教えねぇと喉元に風穴開けるぞ!!」
イライラした様子でレイピアを抜こうとするガロンを見て山賊は怯えたように震え出した。
「教えますから。お許しをぉぉ」
山賊の道案内を受けて三人は川の上流に沿って歩き大きな滝の前まできた。
「この裏の洞窟が俺たちの拠点でさぁ」
「なるほどな。こんなに目立たないところなら見つからないわけだ。昨日のやつがあっさり口を割った訳がわかったぜ」
ガロンはそう話すと山賊を投げ捨てるように地面に叩きつけた。
「いてぇ!!」
「山賊をやめて平穏に暮らすなら殺さずにおいてやる悪党!!とっと失せろ!!」
山賊はガロンの言葉を受けるとふらふらした足取りで一目散に逃げ出した。ガロンはそれをただ見ていた剣を抜くこともせずに。
「いいのか?」
「あぁ、あいつは約束を守ったからな殺すのはやめた」
「フッ・・・・・・そうか」
嬉しそうに笑うカレッジを見て、エメリアは首を傾げるのだった。
三人は滝の裏の洞窟に入り奥へ進んでいった。洞窟中は水が滴り落ちる音や、蝙蝠が天井で眠っていたりと今の所人の気配はない。
そんな洞窟の内部を道なりに進んでいると二手に道が別れていた。
「どうする?ガロン」
カレッジの言葉を受けてガロンは左の道を指差した。
「俺はこっちの道をいく。カレッジと嬢ちゃんは右の道を探せ・・・・・・獲物は早い物勝ちだ」
「わかった。気をつけろよガロン」
「ガロンさん。また後で会いましょう」
カレッジとエメリアはガロンに別れを告げると右の道を進んでいった。二人が洞窟の闇の中に消えるのを見届けるとガロンは静かにレイピアを抜いた。
「さて、山賊長さんよぉ。奪ったハイレプリカを返してもらおうか」
そう一言口に出すと目の前の道を進み始めるのであった。




