悪を貫く一閃
剣先が欲する物を刺し示す それはお前の命
カレッジとエメリア、ガロンは森の中を歩いていた。ガロンと手を組むことにした後、三人は山の中で山賊たちを探していた。
「しかし、どうやって探すつもりだ?山の中は広いし山賊たちが捕まっていないところを考えると、山の中は山賊たちのテリトリーだぞ」
ガロンの質問にカレッジはエメリアを指差した。
「うちの弟子は風魔法が使える。風魔法の探知で山の中を探していく」
「なるほど・・・・・・嬢ちゃんも結構なやり手なようだな」
「いや〜それほどでもないですよぉ」
エメリアは照れながら反応を返すとキリッと真剣な表情をした。
「じゃあやりましょうか」
エメリアは風の膜を周囲に展開するように風魔法を広げていった。あたりにそよ風が吹き森の葉を揺らした。
「おぉすごい魔力だな。嬢ちゃん」
そして何か風魔法で見つけたのかエメリアはピクッと身体を動かした。
「ここを真っ直ぐ行ったところに二人います。山賊かも!!」
「よしでかした。エメリア」
三人はエメリアを先頭に真っ直ぐに走り出した。進み続けると森を抜け原っぱのような場所に出た。
そこには動物の毛皮を鎧のように身に纏い、剣を持った男が二人いた。状況と姿から見て恐らく山賊だろう。
そして男たちの足元には血で原っぱの草を赤く染めた死体が転がっていた。死体は軽装な鎧を身につけており、手には剣が力強く握られていた。恐らく山賊を狩りに来た傭兵だろう。
状況から見て傭兵が山賊たちに返り討ちにあったといったところだろう。
「なんだ?また新しい傭兵か。うじゃうじゃ来やがって虫か何かこいつらは」
「まぁそれだけボスが有名になったってことさ」
山賊たちは話し合えるとエメリアに向けて斬りかかってきた。
エメリアに刃が当たるその刹那、キンッという音があたりに響いた。
カレッジとガロンが山賊達の一太刀を剣で受け止めたのだ。
「エメリアは下がってろ」
「こいつらぁ・・・・・・女性を平気で殺そうとするとは・・・・・・許せんなぁ」
カレッジとガロンは剣を大きく振り払うと山賊達を吹き飛ばした。
「くっ!?」
「うぉっ!!」
二人の山賊は大きく吹き飛ばされ体勢を立て直そうしたその時、片方の山賊の前にカレッジ剣を振り上げ立っていた。
そしてそのまま剣を振り下ろした。山賊の胸から腹を切り裂いた。切り裂かれた山賊の傷口から血が噴き出すと、そのまま後ろに倒れた。
「お、おい大丈夫か・・・」
もう一人の山賊も声をだそうとした瞬間喉元に突如として穴が空いた。穴は山賊の喉元に風穴を開けた。
ガロンがレイピアで山賊の喉元を貫いたのだ。細い光が一閃した。喉元を貫かれた山賊は声を発することなく、力が抜けたように原っぱに大の字で倒れた。
「うっ・・・・・・くそぉ。いてぇ」
カレッジに斬られた山賊が傷口を抑えているとカレッジが覗き込むように山賊を見下ろしていた。
「傷は浅く斬った・・・・・・お前らのアジトはどこだ?言えば命は保証するぞ」
「くぅ・・・・・・この山の頂上だ。ほら教えたぞ!!だから命だけは」
山賊が言葉を終える前に喉元に穴が空いた。そして山賊はドサッという音を立てて倒れるとそのまま静かになった。
死体になった山賊の方へ血が滴り落ちたレイピアを持ってガロンが近づいて来た。
「おい!!何も殺す必要はなかっただろ。こいつは約束を守ったんだぞ!!」
カレッジの言葉を聴くとガロンはレイピアを大きく振り払い、血を落とすと腰の鞘にレイピアを納刀した。
「・・・・・・甘いな。こいつはすでに人を殺してる。報告では近くの村も被害にあって死人もでているそうだ。こいつは悪だ!!殺して当然さ」
カレッジはガロンを睨みつけるがこれ以上問答を続けても無駄だと思ったのか、その場を離れエメリアの元に駆け寄った。
「大丈夫かエメリア?」
「は、はい。反応できませんでしたがさすがですね師匠たち」
「エメリア。囚人や声無しの魔女を倒して自信がつくのは悪くないことだが世界には上がいる油断するなよ」
「・・・・・・はい」
「安心しな。俺の前で女、子供に手は出させねぇよ」
ガロンがそう話すとカレッジはガロンを睨みつけた。エメリアはスッと立ち上がるとそのまま歩き出した。
「さ、さぁ行きましょうよ。山賊のアジトもわかったんですし」
この場の空気を誤魔化そうとエメリアは声をかけるが、カレッジとガロンは言葉を交わすことはなくエメリア後をついていくように歩き始めた。
気まずい空気のまま日は段々と傾き、周りを暗闇が包み始めるのだった。