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ナイトパーティー  作者: 内山スク
4章 声無しの魔女編
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あなたに贈る言葉を雷鳴にのせて

 声を取り戻したエメリアは声無しの魔女がフルフルと震えていることに気がついた。顔は憤怒の表情に変わり、唇を力強く噛み締めるあまり唇が切れ血を流していた。

「キサマァ・・・・・・ヨクモワタシノアツメタコエヲ・・・・・・ゼッタイニユルサン!!」

 声無しの魔女の声は今まで奪ってきた声とは比べ物にならないほど酷いダミ声であり、大声を出しすぎて枯れた声のように聴くにも耐えない不気味に感じる声だった。

 声無しの魔女が腕を大きく振るうと水弾がエメリア目掛けて飛んでいった。

 しかし水弾はエメリアの纏う風の膜によって弾かれた。しかし、勢いは殺すことができずエメリアは地面に吹き飛ばされるように倒れた。

「きゃ!?」

「ウットシイカゼダ。シカシソレハ、マリョクヲタイリョウニツカウ・・・マチツツケレバワタシノカチダ」

 声無しの魔女はローブのポケットから小石ほどの澄んだ海のように青い宝石を取り出した。その宝石はまるで深海を覗き込んだように深い青に包まれていた。

「シカシソレデハワタシノキガオサマラン!!アットウテキチカラデツブシテヤルコノハイレプリカデ!!」

 声無しの魔女はそう話すと青い宝石を飲み込んだ。すると声無しの魔女の身体が変化し始めた。

 手や首元には魚の鱗のように青く変色し、足はまるで人魚のように魚の尾へと変化した。口元からは八重歯が見え、爪も鋭く伸びた。

 人魚のように変化した声無しの魔女はまるで水中にいるように空中を泳ぐように浮遊していた。

 そしてエメリアに向けて口を開けると口から衝撃波を発生させた。

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「キャァァァ!!」

 衝撃波は森の木々を倒すほどの威力があり、エメリアも風の膜を張っていたとはいえ大きく吹き飛ばされた。森に嵐を横なぶりに叩きつけたように衝撃波が木々を吹き飛ばした。

 衝撃波の影響から土煙が立ち込める。土煙が晴れるとエメリアは倒れた木の上に横たわっていた。気を失っているが呼吸はあるようだ。

「う・・・・・・うぅ」

 声無しの魔女はエメリアにトドメを刺そうと指先から水の弾丸を撃とうとしたその瞬間。

 声無しの魔女の手に矢が突き刺さった。シオンが森の中から声無しの魔女に向けて放ったのだ。

 しかし矢は声無しの魔女の鱗に阻まれ、皮膚まで刺さらなかった。

「アナタカラサキニコロソウカシラ。シールノキシ!!」

 声無しの魔女は暗闇に包まれる森の中に向けて衝撃波を放った。衝撃波によって木が倒れ、土煙があたりを包みこんだ。

 森林地帯あったとは思えないほど木々が倒れ、荒地となった場所から人影が見えた。その人影は蝋燭の火のようにゆらゆらと立ち上がると、声無しの魔女を睨みつけた。

 シオンがつけていた口元の布はとれ、綺麗な唇が露となり、衝撃波の影響で服もボロボロだった。

「アナタノコエモキニイッテイタノニ、ザンネンダワ」

 声無しの魔女の言葉を聞くとシオンはニヤリと笑みを浮かべると口元を動かし、取り戻した声で力一杯の大声で声無しの魔女に聞こえるように叫んだ。

「あなたにサンダーロアーの本当の使い方を教えてあげるわ」

「ナニ?」

 声無しの魔女の疑問に言葉を返さず、鈴のような綺麗な声で高らかに宣言する。

「サンダーロアーの本当の使い方は心の底から撃ち抜きたい物を言葉にすること」

 そう言うとシオンは空を掴んだ。すると青白い矢がシオンの手の中に生成された。そしてその青白い矢をサンダーロアーに装填する。

 するとサンダーロアーはバチバチと激しく稲妻を発生し始めた。電気が弾けるような音があたりに響き渡る。

「サンダーロアー貴方を解放する。私が心の底から撃ち抜きたい物は・・・・・・」

 声無しの魔女はシオンに向けて水の弾丸を撃とうとするがそれはもう遅かった。

 シオンはまるで言伝を残すようにサンダーロアーに語りかけた。

 矢に言葉をのせるようにして。

 声が奪わていた間伝えられなかった言葉を、想いを矢に込めるように弓を引く。

 そしてシオンはサンダーロアーに装填された矢を離し声無しの魔女に向けて自身の想いをのせた矢を放った。


「カレッジの心」


 サンダーロアーから放たれた矢は倒れた木々を吹き飛ばし声無しの魔女に雷速で迫る。

 当然声無しの魔女は反応すらできなかった。雷速の矢は声無しの魔女の胸元を大きく撃ち抜き大穴を開けた。

 撃ち抜かれた声無しの魔女の胸元を開いた穴を血が埋めるように大量に出てくる。

 そして声無しの魔女は音もなく静かにその場に倒れた。

 声を取り戻した騎士によって、声無しの魔女は討たれたのだった・・・・・・

告白しないと射てない弓(笑)

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