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ナイトパーティー  作者: 内山スク
4章 声無しの魔女編
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静寂を破る者

 アルカナルの町のはずれには森林地帯が広がっており、自然豊かな植物と微かに川の流れる音が心地よく聴こえてくる。

 そんな森の中、鼻歌まじりに意気揚々と歩く一人の女性がいた。とんがり帽子を被り、ローブを羽織っている。首元には青黒い宝石がついた声のレプリカをつけ、先ほど奪った幼さを残したふわりとした声で鼻歌を奏でていた。声無しの魔女だ。

「この声、若々しくて本当にいいわね。歌声もうっとりするわ。奪えてよかった」

 奪った声を堪能しながらご機嫌に森の中を歩いている声無しの魔女だったが、そのご機嫌も次の瞬間消え去ることとなった。

 突然声無しの魔女の視界の端を何が横切ったのだ。横切った物は木に突き刺さり、声無しの魔女は横切った物の正体を確認する。

 矢だ。それもただの矢ではない、青白く発光した矢はその形を崩しあたりに電撃を発生させた。

 静かな森の中をビリリリという雷鳴が響き渡った。

 青白い光が声無しの魔女の周りを包み込んだ。あたりの木や草は黒焦げになり、草は微かに燃え始めていた。

 しかし声無しの魔女は無傷だった。声無しの魔女の周りを水の膜が包み電撃を塞いだのだ。

「ずいぶんな挨拶ねシールの騎士さん。それともこの声で話したほうがいいかしら」

 声無しの魔女が首元の青黒い宝石を触ると声無しの魔女の声は先ほどの幼さを残した声から鈴のように澄んだ綺麗な声へと変化した。

「あなたの声も私のお気に入りよ。手放すつもりはないわ」

 声無しの魔女は挑発するように森の奥に大きな声でその声を響かせると森の奥から再び青白い矢が三本飛んできた。

 声無しの魔女は水の盾で矢を塞ぐと青白い矢は水の中に飲み込まれた。

 水の中で青白い矢から電撃が発生すると青白い矢は水の中に落ちた絵の具のように溶けて消えていった。

「あなたでは私には勝てない。いくら矢を撃とうと無駄よ」

 声無しの魔女は腕を水平に伸ばすと水の膜は蛸の触手のように唸り始めた。そして水の触手はあたりの木々を薙ぎ払い始めた。

「出てきなさいな。この声無しの魔女が引導を渡してあげるわ」

 すると青白い矢がまたもや声無しの魔女目掛けて飛んできた。

「ふん。無駄よ」

 声無しの魔女はまるで指揮棒でも振るうかのように腕を振ると水の触手が青白い矢を飲み込んだ。

 しかし声無しの魔女は一つミスをした。一本だけが水の触手を貫いて声無しの魔女の肩に突き刺さったのだ。

「いっつ・・・・・・なぜ!?水魔法で塞いだはずなのになぜ矢が私に刺さるの?」

 肩に突き刺さった矢は先ほどの青白い矢ではなかった。矢尻は鉄製、他は木と鳥の羽でできた一般的なただの矢だった。

 だたの矢にサンダーロアーの雷撃を見に纏わせ放ったのだ。水の膜は纏わせた雷撃のみを剥がしただけだったため矢を塞ぎきれなかったのだ。

 声無しの魔女が肩の矢を引き抜くと森の奥から三本の矢が飛んできた。恐らくサンダーロアーで雷撃を纏わせた矢だろう。

「くそ!!舐めるなよ小娘が!!」

 声無しの魔女は指を上に上げると地面から高水圧の水の盾が出現した。高水圧の水の盾は矢を塞いでみせた。

「声無しの魔女に血を流させた罰は重いわよ!!蜂の巣にしてあげるわ」

 声無しの魔女の周りに小石ほどの水滴が浮き始めると森の奥目掛けて数百の水弾を飛ばし始めた。

森の奥の暗闇からは木が削れるようなガッという音が鳴り響いた後、沈黙が広がった。

 森の奥には暗闇と沈黙が広がるばかりでシオンを仕留めかどうかもわからない。

「ふ、流石にこれで懲りたでしょう。あなたの声はまだ失いたくなからねぇ。これぐらいにしといてあげるわ」

 声無しの魔女が自身の首元に触れるとある違和感に気がついた。つけていた声のレプリカがない。

 声無しの魔女はあたりを見渡すと視界の端に影を捉えた。

 声無しの魔女は影を追うように目で追いかけるとそこには水色の髪をした女性が立っていた。自身が声を気に入り、声を奪った女性エメリア・テンペストだ。

 彼女の手には声無しの魔女が先ほどまでつけていた声のレプリカが握られていた。

「貴様!!それを返せ!!」

 声無しの魔女は水の触手でエメリアを貫こうとするが水の触手はエメリアに触れる前に弾かれた。

「な、なに!?」

 エメリアは風魔法で自身周りに風の膜を張りガードしていたのだ。

 そしてエメリアは奪った声のレプリカを空中へと放り投げた。

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 声無しの魔女の悲痛の叫びを打ち砕くように、声のレプリカは森の奥から飛んできた矢に貫かれ粉々に粉砕された。

 粉々に砕かれた声のレプリカの破片が静かに地面に落ちると、エメリアは確かめるように自身の喉に触れた。

 そして声を確認するように軽く「あー」と声を出した。

「やりましたよシオンさん!!約束通り声のレプリカを奪いました。これで私たちの声も戻りましたよ」

 声のレプリカが破壊され、エメリアは戻った自身声で歓声を上げた。

 しかし、エメリアは気がついていなかった声無しの魔女が震えるほど怒りに満ち溢れ憤怒の表情を浮かべていることに・・・・・・

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