求め続けた輝き
時は少し遡る。エメリアがラガマと戦っている際中、ギアルスは建物の屋根からシオンたちを狙撃しようと弓を構えていた。
「追跡のレプリカの視界に収めたぞシールの騎士よ。お前のオリジンシリーズ奪わせてもらう」
ギアルスは裏路地に入った後物陰から出てこないシオンを射抜こうと矢を装填し、シオンを狙っていた。
彼の右目につけたモノクルには赤い点のような物が映っていた。シオンの隠れる物陰にその点は張り付くように映し出されている。
ギアルスは追跡のレプリカで居場所を把握し、シオンが物陰から出てきたところを射抜くつもりなのだ。
そしてシオンが矢を装填した白い弓を構え物陰から出てきた。
「今だ!!」
ギアルスが矢を放とうとした瞬間自身の頬を何かが掠ったことに気がついた。頬を触ってみると赤い血が指に付着した。
矢が掠ったのだ。先ほどシオンが物陰から出てきた瞬間、ギアルスが矢を放つ前にすでにギアルス目掛けて矢を放っていたのだ。
「バ、バカな・・・最初の一発で俺の狙撃位置を特定して、俺より早く矢を放ったというのか!?」
ギアルスが動揺していると突然、自身の右手の甲に電流のような痛みが走った。
「痛っ!?」
ギアルスは痛みが走った自身の手の甲に目を落とすと矢が手の甲に突き刺さっていた。矢は手の甲から手のひらまで貫通していた。
あまりの激痛にギアルスは弓を手から離し、自身の手のを押さえた。
ギアルスの手から離れた弓は屋根を転がり、地面に落下した。しかしギアルスは矢に射抜かれた痛みから弓を拾いに行く余裕もないのか額から大量の汗を流していた。
「く、なんて奴だ。俺より早く狙撃しただけでなく。正確な狙撃技術。ラガマと合流して戦うべきだった」
ギアルスが手を押さえ込んでいると足元の屋根に矢が突き刺さった。
シオンがギアルス目掛けて矢を放ったのだ。このままここにいてもシオンに射抜かれるのは時間の問題だった。
「ここは一旦引いた方が良さそうだな」
ギアルスは屋根の上を走り抜けると屋根の上から飛び降りた。そして窓が開いた建物を見つけると窓から建物の中に滑り込むように入りこんだ。
数十分が経ったがギアルスはしばらく入り込んだ建物の部屋の中で休んでいた。
シオンからの追撃はなく家主が戻ってくる気配もない。
すると突然ガチャという音が聞こえ誰かが部屋のドアを開けて入ってきた。ギアルスは身構えるが、入ってきたのは白い弓を持ったラガマだった。
「なんだ・・・ラガマか」
「その様子だとこっぴどくやられたようですね。ギアルス」
矢で撃ち抜かれた手を押さえながら痛みで汗を流すギアルスにラガマは狂気的な笑みを浮かべた。
「お前こそな。服が汚れてるぞ」
ギアルスが指摘するとラガマは手で埃を払うように服を軽く叩いた。確かに服からは煤や埃が叩くと出てきた。
「落ちた場所がゴミ置き場でしてね。まぁそのおかげで助かったんですが」
「ところでその弓はなんだ?」
ギアルスが質問するとラガマは自信満々に手に持った白い弓を見せつけた。
「貴方が欲していたオリジンシリーズの弓ですよ。逃げるついでに奪ってきました」
「オリジンシリーズ?なにを言ってるんだ?」
「・・・・・・何ってあの女性が持っていたこの白い弓がオリジンシリーズではないのですか!?」
「違う。俺が昔見たオリジンシリーズはそんなただの弓ではなかった・・・・・・」
二人が話していると突然ガッという音が部屋に響き渡った。
二人は音のした方向を見てみると床に矢が突き刺さっていた。しかしそれはただの矢ではない。正確にいうと矢の形をした青白く発光する何かだ。
ギアルスは急いで窓から顔を出し矢が飛んできた方角を見ると、そこには二人の女性が見下ろすように屋根の上に立っていた。一人は水色の髪を風にたなびかせた刃のない柄をもった女性、そしてもう一人は先ほど自身の手を撃ち抜き、自身が欲してやまないオリジンシリーズを持つ女性。二人が戦っていた女性たちシオンとエメリアだ。
そしてシオンの手には白い弓が握られていた。だがただの弓ではないことは一目で理解できた。弓の弦の部分が青白いエネルギーのようなまるで電流のような物質で形成されていたからだ。
「おぉ。あれこそが俺が求めいた武器だ・・・・・・美しい」
シオンの持つ弓に見惚れるギアルスの後ろではバチバチと何かが弾けようとしている音が鳴っていた。
「ギアルス。何かこの矢おかしいですよ」
床に突き刺さった矢は形を崩し、まるで糸が解かれるように稲妻を発生させ部屋中に放電した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ギアルスとラガマは放電を浴びると床に倒れ込んだ。身体が痺れているのか二人ともピクピクと身体を動かしながら身動きが取れなくなってしまった。
シオンとエメリアは二人が動かなくなったことを外から確認すると建物の中に入っていった。