あの輝きをもう一度
アルカナルの町のある建物。ドアを開けて一人の男が入ってきた。短い黒髪に弓と矢筒を背負いモノクルを着けた男。カラトナ要塞からの脱獄囚ギアルスだ。
「おい、ラガマどこにいる。出てこい」
ギアルスの声が建物内に響いた。そして声が止みしばらく静かになるとドアを開けて血だらけの男が出てきた。
肩にかかった長髪の黒髪に、白い歯を見せて狂気的に笑っているその姿はどこからどう見ても正常な人間には見えない。
「来ましたかギアルス。すいません。家主さんとの話し合いが長引いてしまいまして」
ラガマはギアルスに元に向かって歩き出すとズズズと床に生々しい音が響いた。
後ろに何かを引きずっている。それは男の死体だ首には目を凝らしてみないとわからないぐらいの糸がかかっており、それを持って死体を引きずっていた。
「おい、目立つからあまり殺すなと言っただろ」
「すいません。こういう性分でして、それより貴方が求める弓のオリジンシリーズは見つかったんですか?」
「まだだ。しかしフルバイエにいたシールの騎士達の仲間の女を追跡のレプリカで追っている。いずれ会えるだろう」
「そうですか・・・しかしそのオリジンシリーズのどこがいいんですか?」
ラガマの質問を聞くとギアルスはキラキラと目を輝かせて、まるで子供がはしゃぐように声のトーンが高くなった。
「よくぞ聞いてくれた!!俺があのオリジンシリーズと出会ったのは戦場だった。俺はミサハの弓兵として戦争に参加していたのだが、戦場で見たあの美しさを今でも忘れられない。白い弓から青い稲妻のような矢が放たれたんだ。その美しさと輝きを見た時、俺はあの弓をどうやっても手に入れようと決めた」
「は、はぁそうですか」
ラガマは呆れた顔をしていたがギアルスは気にすることなく話を続けた。
「俺はシール王国に入るために上官の首を手土産にしようと上官を殺した。しかしミサハから逃げることができず、カラトナ要塞に入れられたわけだ。もう一度あの輝きをこの目に焼き付けたい。そして手に入れたい!!」
「なるほど・・・よく分かりました。まぁ同じ囚人仲間として貴方に協力しますよ。私は人を死ぬ時の表情が見れれば満足ですし」
「ラガマ。貴様も欲しいオリジンシリーズはないのか?」
「私ですか?そうですね強いて言うなら・・・・・・ブルートランスですかね」
「なぜだ?」
「殺しが楽しくなりそうだからですよ。人を死ぬ時の表情が一番自分が輝いているように感じるからです」
狂気的な笑みを浮かべるラガマを見て冷や汗をかきながらもギアルスは笑みを見せた。
「フッ・・・では我々の目的の為にシールの騎士を倒すとしよう」
「そうですね。しかしパージさんはどうしますかね」
「どうせ。俺たちを賞金がかけられている。あの男の元にいてもいずれ始末されるだけさ」
「それもそうですね・・・・・・では少し待っていてください」
「何か準備でもするのか?」
ギアルスの疑問を聞くとラガマは再び狂気的な笑みを浮かべた。
「家主さんとのお話がまだ残っているのでそれが終わったらオリジンシリーズを探しましょう」
ラガマはそう話すと再びドアを開けて男の死体を引きずりながら最初に出てきた部屋に戻っていた。
部屋外にも何かが鼻につく生臭い匂いと肉をぐちゃぐちゃにするような鈍い音が聞こえてきた。
ギアルスはその部屋に入ることなくラガマが出てくるのを待っていた。