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ナイトパーティー  作者: 内山スク
3章 脱獄囚と腐った忠犬編
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賽は投げられた

 日が沈みあたりが暗闇に包まれたラゴントの塔最上階。二人の男が立っていた。

 一人はフルフェイスの甲冑で顔を隠し、身体中にやけど傷や切り傷が痛々しく残っている男、パージ・クラッシュボーンだ。

 そしてもう一人は重々しい鎧で身を包み艶々かな黒髪をピシッと七三に揃え、剣を腰に挿した男だった。

「他のやつらは来なかったか・・・まぁお前だけでもきてくれてうれしいぞタッカー」

「いえいえカラトナ要塞から出していただいた恩もありますし、かの有名なシールの騎士団長と共に戦えるとは光栄であります」

「しかし、ギアルスとドロスが来ないのはともかくイルマが来ないのは妙だな?」

「所詮戦い好きな爺さんですし、来るほうがおかしいであります」

「・・・・・・それもそうだな」

 パージはそう言うと塔の端に移動し遠くの景色を眺めていた。あたりは月明かりで照らされて僅かに岩とそこに生息する動物や虫が見える程度だ。

「ここは元々シール王国の領土だった。シースルーたちを倒すことでシール王国の戦いは終わりを迎える」

「私もミサハの元騎士として最後までお付き合いするつもりであります」

 すると突然タッカーがピクっと何かに気づいたように東の方角を見つめた。

「どうした?」

「私の風魔法の感知に誰か引っかかったであります。数は・・・・・・三人でありますな」

 二人は塔から下を見下ろすと塔から少し離れたところに三人の人影があった。それはパージがよく知る人物たちだった。

「シースルー、カレッジ、レゲン。なぜやつらがここに!?」

「どうするでありますかパージ殿」

「・・・・・・あちらから来たのなら好都合。タッカーお前は塔の入り口でレゲンの相手をしろ。カレッジとシースルーは私がやる」

「わかりました。騎士の誇りにかけてその役目果たして見せます」

 タッカーはそう言ってお辞儀をすると急いで塔の階段を駆け降りていった。

 一人残ったパージは懐から黒い小石を取り出した。黒曜石のように黒い石は月明かりに照らされて怪しく光っていた。

「パワス、フリーメ、リゲイン見ていてくれ。お前らが守ってきたシール王国の仇は取ってみせる」











 カレッジたちはラゴントの塔の入り口まで来ていた。

「さて、パージたちは最上階かな」

「先輩。誰かいますよ」

 塔の入り口の前に人影があった。暗闇で見ずらいが鎧を着た男が立っていた。

「私の名前はタッカー。ここより先はカレッジ、シースルー貴様らのみ通して良いと伝えられているであります」

 鞘に入った剣を地面に突き刺し仁王立ちするタッカーにカレッジたちは顔を見合わせた。明らかに怪しいと三人とも思ったのだろう。

「パージの命令か?」

「そうであります。私はレゲン貴様の相手を任されているであります」

「先輩達行ってください。こいつは僕が相手します」

「・・・・・・わかった。任せたぞレゲン」

 カレッジとアイスノックはタッカーの横を通り過ぎた。タッカーはカレッジたちに斬りかかろうともせずただ目の前のレゲンを見ていた。

「貴方は脱獄した囚人でしょう?パージさんに従う必要はないですよね。僕たちが戦う意味はないと思いますが」

「騎士として受けた恩を返し、主君に従うのは当たり前のことであります。裏切りの騎士にはわからないであまりすか」

「・・・・・・そうですか。では先輩達の帰り道を作るために僕は戦うとしましょう」

 レゲンは腰に挿したクリスタルを静かに抜いた。それを見てタッカーも剣を抜刀した。

 タッカーの剣は刀身が無理やり形を変形させたように凸凹になっており、とても人を斬るような剣には見えない。

 剣同士がぶつかり合う音があたりに木霊した。一瞬だけでも響いたその音はあたりに響いていた動物や虫の鳴き声を掻き消した。

 そしてキンッという音が複数回あたりに響き渡った。

 レゲンとタッカーが激しく剣をぶつけ合う。火花を散らしながら剣を打ちつけ合う。

 そして勢いよく剣をぶつけ合い、力任せに押し切るように鍔迫り合いになった。

 レゲンとタッカーは鍔迫り合いをしているとタッカーが剣を下に向けて引いた。

 レゲンのクリスタルはタッカーの剣の凹凸に引っかかりレゲンの手から離れた。

 タッカーはレゲンの手から離れたクリスタルをキャッチするとニヤリと笑った。

「ハッハッハ武器がなければいくらシールの騎士団長といえども戦えないでありますな」

「・・・・・・武器を奪った程度で勝ち誇るのはやめてください。武器をなくしたぐらいでは僕には勝てませんよ」

「知らないとでも思っているでありますな。オリジンシリーズは持ち主が死ぬか、持ち主が譲渡しない限り能力が使えないことは知っているでありますよ」

「違いますよ。貴方には素手でちょうどいいと言うことですよ」

 レゲンはそう言うと握り拳を作り身構えた。土魔法で硬化すらしていない。

「バカにするのも大概にするであります!!」

 タッカーはレゲンに二刀の剣で斬りかかった。

 しかし、レゲンはタッカーの持つ二本の剣をすれすれで避けた。何度も何度もレゲン目掛けて剣を振り続けるがレゲンに擦りすらしない。

 するとタッカーは凹凸の剣でレゲン目掛けて振り下ろすとレゲンは避けようともせず、タッカーの凹凸の剣を素手で掴み振り払うように受け流した。

 そしてクリスタルを持ったタッカー腕を力を込めて勢いよく殴った。

「くっあ!!??」

 ボキッというとニブイ音がタッカーの腕から鳴るとクリスタルが手から離れた。

 レゲンは宙に放り出されたクリスタルを掴むとタッカーの腹を真一文字に切り裂いた。

 タッカーの腹からクリスタルで固まった赤い血の結晶が飛び出した。

「くばぁ!!」

 タッカーは地面に倒れた。レゲンに斬られた傷が深かったためか腕の痛みからか苦悶の表情を浮かべていた。

「ぐぁぁぁ!!なぜ国を忠誠を誓わない裏切りの騎士に私が負けるでありますか!!こんな、こんな忠義もない悪人に!!!」

 レゲンは地面に倒れたタッカーを見下ろしながらクリスタルの刀身をタッカーの首筋に押し当てた。

「貴方みたいな騎士ばかりだから僕たちは国を滅ぼしたんですよ。そこに暮らす国民のためにね」

 レゲンは言葉を終えるとゆっくりとクリスタルを横に振った。

 先ほどまであたりに響いていたタッカーの声が消えた。

 レゲンは塔の屋上を見上げた。上にいるカレッジたちと合流する気はない。戦いに割って入ったら彼らに殺されかねないからだ。

「頼みましたよ。先輩達・・・」

 レゲンは塔の入り口で帰りを静かに待っていた。あたりに響く動物や虫の鳴き声と共に。

最近更新が遅くなってすいません。用事があり、昼頃に投稿できませんでした。明日も更新するのでよければ読んでください。

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