ティータイム
エメリアは街のカフェで紅茶を飲んでいた。
カレッジを待って三十分たつが全く来る気配がない。
「遅いな。師匠」
紅茶を啜りながら、待っていると突然目の前に男がやってきた。
「おー美しきお嬢さん。一人でお茶とは寂しいですね。どうです?私とお茶を飲んでお話ししませんか」
突然話しかけてきた男はフルフェイスの兜を被っているため、顔は見えないが声は年老いたように聞こえる。手や足には斬り傷や火傷などの古傷が痛々しく刻まれている。
姿を確認するまで話し方からアイスノックかと予想していたのか全く知らない人だったため、エメリアはしばらく呆気に取られていた。
そしてしばらくして思考が回り始めると自分がナンパされていることに気がついた。
「でも私、人を待っているので」
「では来るまで、お茶をしましょう。一人では退屈でしょう。話し相手になりますよ」
「は、はぁ・・・?」
「美しい女性を見るとほっとけない性分でして。思わず話しかけてしましました」
男はエメリアの目の前の席に座ると店員に紅茶を注文した。
エメリアはアイスノックみたいな人だなと思いながらも紅茶飲んだ。
「お嬢さんはここに観光に来たのですか」
「いえ、仕事で」
「仕事?その飾りの剣を使う仕事ですか」
男はテーブルに立てかけられたエメリアの剣を見ながら話すと、エメリアは驚いた表情を見せた。
「よく、刀身がないとわかりましたね」
「テーブルに立てかけているのに、重さがかかっていない。見ればわかります」
「そういう貴方は仕事ですか」
「えぇまぁそんなところです。裏切り者を探していましてね」
「裏切り者?」
「裏切り者をこの街で探してまして、そいつらがやらかした罪を精算させるためにこの街に来ました」
男のは手をフルフルと震わせ、何かに怒っているような様子をみせた。
「その人たちって何をしたのですか?」
「国に対しての反乱です。国に忠義を捧げることを教えてきたのですが、反乱の時に弟子に裏切られましてね。その時の弟子から受けた傷がこの街に来てから疼くのです」
「そうなんですか。その人が見つかるってくれるといいですね」
エメリアの言葉に穏やかな口調で「そうですね」と脱力したように返す男の目元は疲れたようでもあり、作り笑いのように見えた。
男の表情は兜で見えないが、隙間から見える目は怒りや悲しみが入り混じった目をしていた。
その時街の時計台の方からドォンと轟音が鳴り響くと地震のような揺れが町中に鳴り響いた。
「師匠たちかも!?私行きます。えぇっと」
「自己紹介を忘れていましたね。パージ・クラッシュボーン・・・それが私の名です」
「パージさん。話せて楽しかったです。またお話ししましょう」
走っていく、エメリアを見送るとパージはゆっくりと立ち上がった。
「さて、可愛い女性とも話せたし捜索再開と行くか」
パージは時計台の方に力強い足取りで歩きながら向かっていった。