満足するまで斬りあおう
街の中央にそびえる時計台。そこからカレッジを弓で狙うものがいた。
彼の名前はギアルス。かつてある王国に勤めた狙撃手であり、騎士団長の暗殺により投獄された。
彼は追跡のレプリカというモノクルをつけており、居場所を把握し狙撃していた。
再びカレッジを射抜こうと、弓を引いた。
しかし、その弓は発射されることはなかった。
弓が真っ二つに斬られたからだ。
「時計台に来て正解でした。まさか脱獄囚がいるとは」
後ろを振り返ると水晶のような剣クリスタルを持ったレゲンが立っていた。
「狙撃兵ギアルス。捕まるか、首を差し出すか選んでいただきましょう」
「その判断は早計すぎるな」
部屋の隅から声がしたため、レゲンは声の方向を見ると暗闇の中から白髪の初老の男が立っていた。
手配書で見た男、イルマ・カーストだ。
イルマはサーベルを片手に持ち、レゲンを睨みつける。
「パワスではないのが残念だが、シール王国の騎士と戦えるだけで神に感謝せねば」
「悪いですが、老人に容赦できるほど手加減はできませんよ」
「ほう・・・それはクリスタルか。たしかリゲイン・ロックダイスが持ち主だったはずだったが」
「リゲインは僕の父です」
「そうか・・・時代は移り変わるものだな」
レゲンとイルマは剣を構える。緊張感が部屋中に走った。
「ちょっと待った!!」
突然ギアルスの言葉が部屋中に響き渡り、緊張感を解いた。
「シール王国の騎士よ。一つ確認したい・・・オリジンシリーズに弓があるとは本当か?」
唐突な質問に一瞬レゲンは呆気に取られるが、再び緊張感が部屋を包んだ。
「・・・・・・えぇありますよ。持ち主は我々とは一緒にいませんが」
「それだけ聞ければ十分だ」
ギアルスは笑みを浮かべると走って時計台の部屋から出て行った。
「待て!!」
「お前の相手は私だ」
ギアルスを追おうとするがイルマにサーベルで斬りつけられ、行手を阻まれる。
「存分に斬りあおうぞ」
イルマはサーベルを横に振ると、あまりの剣圧にレゲンは外に吹き飛ばされた。
「何という剣圧!!」
空中に投げ飛ばされたレゲンは土魔法を発動すると地面から塔のように土が突き出た。
レゲンは足場を作り落下死を塞いだ。
しかし、イルマも逃がさまいと土魔法でできた足場に着地するとレゲンに斬りかかる。
「安心しろ。このサーベルはレプリカではない。剣技とは技のぶつけあい。そう思わんか?」
「そうですね。だとしたらあなたの相手に僕はピッタリだ」
レゲンはイルマの頬を斬りつけた。斬りつけられた傷口から結晶が生えてきたように血が固まる。
「お互い満足するまで、斬りあうとしましょう」
街の屋根に着地すると斬りあいを続けるのであった。