脱獄囚人を狩ろう
「あんたらいい金儲けがあるわよ」
夕刻時いきなり家に訪ねて来たレミアがそんなことを言い出した。
「なんすか突然。こっちはさっきリケイルとレゲンにボコボコにされたばかりなんですよ」
「ギャンブルでスルからでしょ」
「ギャンブルでスルからですよ」
顔面が腫れ上がるほど殴られたカレッジにリケイルとレゲンはツッコミをいれた。
エメリアも苦笑いしながらカレッジを見ていた。
「でいい金儲けってなんですか?レミアさん」
不思議そうに聞くエメリアにレミアはニンマリと笑みを浮かべた。
「一週間前カラトナ要塞から囚人が六人脱獄したの。その囚人を捕まえるか首を持ってくれば金貨二十枚ですって」
「へーそいつはいいな」
カレッジも顎に手を当てながら目を輝かせる。
「他の傭兵たちも躍起になって探してるわ」
「早い者勝ちですか・・・ですが脱獄した囚人の居場所や顔はわかるのですか?」
レゲンが聞くとレミアは六枚の紙を取り出した。その紙には脱獄した囚人の人相が書いてあった。
「カラトナ要塞初の脱獄者だからね。高く賞金をつけたわけ」
カレッジたちは人相書きを確認するとカレッジは眉をひそめた。
そこには初老の男性が描かれており、名前はイルマ・カーストと書いてあった。
「こいつ、シール王国にいた頃師匠が捕えた男だ」
「師匠の師匠が捕まえたんですか?」
エメリアが興味深そうに聞くとカレッジは頭を掻きながらめんどくさそうな顔をした。
「こいつは剣士に喧嘩を売りまくる戦闘狂で、シール王国に騎士を何人も殺してたんだ。それを師匠に挑んで捕えられたわけ」
「その事件ならあたしも聞いたことあるわ。確か・・・パワスさんが圧勝だったとか」
レミアが話は終わりと言わんばかりに手を叩いた。
「一人金貨二十枚。あんたら全員狩ってこれるでしょう」
「俺は参加しますけど、お前らはどうする?」
カレッジが問いかけるとレゲンは少し考えるような様子を見せた。
エメリアはすぐに「やります」と返事をした。
「あたしはパス。捕縛や死体を持ってくのは難しいし、まだ夜しかまともに動けないから」
「僕は参加します。人手が多い方がいいでしょう」
「あーん♡活発的なレゲンくん素敵〜♡」
抱きついてくるリケイルにうざそうな表情をするレゲンを尻目にカレッジは人相書きを集める。
「じゃあ行くか。囚人狩り」
「楽しそうしゃねぇか俺も連れてけよ」
唐突に聞き覚えがある声が後ろからしたため、カレッジたちは振り返った。
そこには黒い髪をオールバックにした赤目の男シースルー・アイスノックが立っていた。
カレッジに斬られたはずの左手も元に戻っており、黒い手袋をはめている。
「お前も来るかアイスノック。てか左手くっつけてもらったのか?」
「いや、残念ながら左手は無くしちまった」
アイスノックはそう言いながら左手の手袋を外すと朱色のガラスのように透き通った左手がその下から出てきた。
「メタモルフィアで義手を作った。意外と便利だぜ」
アイスノックは見せつけるようにメタモルフィアでできた手を握ったり広げたりして見せた。
「え?なんでアイスノックさんがいるんですか師匠?私だけ状況飲み込めてませんけど」
エメリアのみがキョトンとしており、なぜかリケイルとレゲンは対して驚いていない。
「アイスノックはレミアさんの彼氏だ」
「えぇぇぇ!!いつからですか!?」
「たぶんお前が盗賊騎士団に誘拐された前から」
「最初からじゃないですか!!」
怒るエメリアにレミアはごめんねといいたそうに手合わせる。
「僕も事件の後に先輩から聞きました」
「あたしも」
レゲンとリケイルも聞いていたあたり、エメリアだけ仲間外れにされていたらしい。
「・・・師匠のいじわる」
「ごめんて」
いじけるエメリアをよそ目にアイスノックは肩を回すと気合いを入れた。
「よし三人ともいくぞ。囚人狩り」
アイスノックの言葉と共に四人は囚人狩りに出かけるのであった。