罪人の命は粛清のために
我が信念に一点の曇りなし
我が行いに一点の曇りあり
空が黒い雲に覆われ雨が降りしきる。
ミサハ王国の領土にあるカラトナ要塞。殺人や反旗を翻した犯罪者が収監されている。今まで脱獄者を一名も出したことがない難攻不落の要塞だ。
そんなカラトナ要塞を遠くから見ている男がいた。男はフルフェイスの兜で顔を隠しているため、顔はわからないが、腰に剣を下げ鍛えられた筋肉には身体中火傷や切り傷などが痛々しく刻まれている。
「お待たせいたしました。パージ様」
名前を呼ばれパージは振り返ると作り笑いをそのまま貼り付けたような男ルイが立っていた。
「遅かったな。用事は済んだのか?」
「えぇ、契約は終わりました。まぁ依頼主は死にましたが」
「ほう・・・それは運がなかったな」
「主人に伝えたところ構わないということでしたので」
「ふん、こんな仕事に貴様を駆り出すお前の主人とやらにも会ってみたいものだかな」
パージは再びカラトナ要塞に目を向けるとルイも隣に立ち同じくカラトナ要塞を見た。
「カラトナ要塞・・・お前の空間のレプリカなら侵入も容易だろう」
「はいもちろんでございます。ご指名した囚人六人の脱獄とその囚人武器とレプリカを持ち出せばよろしいのですね」
「そうだ」
ルイは腰のロングソードを抜くと空間を斬るための準備をする。
「あぁそういえば、昨日オリジンシリーズをもった男と戦いました。名前は確か・・・カレッジ・スペード様」
「・・・・・・カレッジ!!」
怒りに満ちたように言葉を吐き出すとパージは拳を握るとフルフルと震え始める。
「ほかに誰か一緒じゃなかったか?」
「黒いランスをもった黒髪の女性がいましたね」
「リケイルか・・・ならレゲンも一緒にいるな。探す手間が省けたぞ悪ガキ共」
怒りの満ちたように話すパージにルイは狐のように目を細めながら笑みを浮かべた。
「脱獄させた。囚人たちに襲わせるつもりなのですね」
「察しがいいな。これから脱獄される奴らは血の気が多いやつやシール王国に興味がある奴らだ。そいつらをぶつけて、シール王国の裏切り者を掃討する」
「いうことを聞かなかったらどうするおつもりですか?」
ルイの質問にパージは腰の剣を引き抜いた。
「力ずくで従わせるまでだ。罪人の命だ使い捨てにしても構わんだろう」
「左様ですか。では行きましょうか」
その夜囚人六名がカラトナ要塞から脱獄した。牢屋は開けられておらず、牢獄内にも穴や破壊した形跡はなかったという。
見張りの兵が数人殺され、囚人たちから押収した武器やレプリカが持ち出されていたらしい。
この事件は瞬く間に拡がったのであった。