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ナイトパーティー  作者: 内山スク
2章 吸血鬼編
23/97

枯れゆく命に手向けの花を

 リケイルに案内され、町の近くにある山の麓へついた。

 あの世かと思わせるような広い花畑の中にポツンと小屋が建っていた。

 その中に入ると一人の女性がベッドで寝ていた。

 リケイルたちが来たことに気づくと、女性はベッドから上体を起こした。

「帰ったのね。リケイル・・・それとカレッジと・・・そちらは話に聞いていたカレッジの弟子のエメリアさんね」

 女性の顔に覇気はなく、生気が感じられないように青白くなっている。手も震えており、顔もげっそりとしており、腕から指にかけて筋肉が削ぎ落ちたように小枝のように細い。

「久しぶりですね。フリーメさん元気そうで・・・とは言えなさそうですね」

「カレッジ気をつかなくても大丈夫よ。王国が滅びる五年前に私は王国をやめている。あなたたちがしたことは私に関係ないことよ」

 バツの悪そうな顔をするカレッジにフリーメは力なく微笑んだ。

「さて・・・私にはもう時間がない・・・ある吸血鬼に呪われて生命力はもう少ないから」

 フリーメは自身の首筋を見せると町の住人と同じHの呪印があった。

「リケイルにはもう話したけど、あなたたちにも聞いてほしい。私の話を」

 フリーメはゆっくりとだが紫色になった唇を動かして話し始めた。

「この呪印をつけられたのは、王国騎士時代だった。遠征に出ていた時にあの女に噛まれて呪印つけられてしまった」

 カレッジとエメリアは黙ってフリーメの話を聞く。 リケイルもただ黙ってフリーメをみていた。

「その吸血鬼に生命力を吸われると伝えられ、私はブルートランスをリケイルに継承し、騎士をやめて吸血鬼を探した・・・そしてヤツがこの町の領主であると調べてわかったわ。吸血鬼はこの町の住民にも呪印をつけて生命力を吸い取り、若さを得ていた」

 町の住民達が全員呪印をつけていたのは領主による命令とか神の贈り物とでも、思い込まさせ住民たちにつけていたのだろう。

「一年前この町に拠点をおき、私は吸血鬼を待ったが領主は帰ってこなかった。そして私の生命力は無くなっていき、ここから動くこともできなくなった」

「領主の名は、ラキュラス・ソリティア。レミアに居場所は探させているわ」

「吸血鬼は吸血のレプリカを使い多くの人間から生命力を吸い取り、若さを得ている。ここ最近生命力を一気に吸われたわ町の住民も一気に生命力を吸い取ったため、あの現状になったのでしょう」

 フリーメは枝のように細い手をプルプルと震わせて涙を流す。

「仇を取ってくれとは言わない・・・・・・私が救えなかった町の住民の苦しみを晴らしてほしい・・・」

 フリーメは力なく微笑むとベッドに倒れ込んだ。

 自身の体重も支えられないぐらい弱っているのだろう。

 もう長くはない。ここにいる全員がそのことを理解していた。

「話は終わり・・・報酬は払ってあるから帰っていいわよ。あなたたち、死に顔見られたくないしね」

 疲れた顔で仰向けになるとフリーメは目を閉じた。

 カレッジとエメリア、リケイルは外に出ると夕日が落ちようとしていた。

「・・・リケイル」

 名を呼ばれ、リケイルは振り返ると、青ざめた顔でフリーメはベッドから上半身だけを起こしていた。

「あなたと吸血鬼が戦うことがあったらブルートランスの本当の力を使いなさい・・・じゃないとあなたは勝てないわ」

「・・・・・・わかりました。あたしの尊敬する騎士フリーメよ」

 リケイルたちは小屋を後にした。

 その後小屋に行くことは二度となかった。

 花畑に咲く花たちは主人を失ってもきれいに先続けていた。

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