吸血の呪い
二年前、ある夜の森。
シール王国が滅びてから二年がたった。二年間レゲンは周辺の街を周りながら同胞であるシール王国の騎士団長たちを探し回っていた。
そしてレゲンはカレッジと再開し、カレッジの誘いで傭兵業を始めた。
レゲンはその傭兵業が終わった帰りだった。
「獣退治とは、なかなか簡単な仕事でしたね」
レゲンは意気揚々と森の中を歩く。
傭兵業にも慣れ、かつての同胞とも再開できた。今の所文句のない人生を過ごせているそんな気がしていた。
暗く静かな夜の森を歩いていた最中にそれは何の前触れもなく突然起こった。
「イツッ!?」
レゲンは突然右腕に痛みを覚える。
恐る恐る右腕を見てみると、長い黒髪に目元が隠れた女性がレゲンの腕に噛みついていた。
「クッ!!」
レゲン咄嗟に腕を払い距離を取ると、腰から愛刀であるクリスタルを引き抜く。
髪の長い女性の赤い目は暗闇にあやしく輝いており、長くコウモリのように伸びた牙が月明かりに煌めく。肌は死人のように青白く月明かりに照らされたその肌は不気味でもあり美しくもある。
「若い男性にマーキングをつけられてよかったわ・・・あなたの生命力は私の若さになる」
「どういう意味ですか?」
レゲンは、ふと違和感に気づいた。
先ほど噛まれた腕から血が出ていない。
たしかに皮膚を貫通するほどの痛みを感じたため、血が出ていてもおかしくないと思っていたが服は血で赤く染まっていない。
腕をまくり噛まれた部分を確認するとそこには英語のHと似たような刻印がされていた。
「それはあなたの生命力を奪う呪印・・・安心してあなたは今殺さないわ。ゆっくりと生命力を吸っていくためにね」
レゲンはクリスタルで女を切ろうとするが、おかしい女に剣を振ろうとすると、剣の動きが鈍る。
まるで重い塊が押し返してくるように、剣が遅くなり当然女に剣はあたらず避けられた。
「私に攻撃を当たることは不可能・・・その呪印は私への攻撃を躊躇わらせる」
レゲンは足で地面を蹴ると土魔法を発動し、スパイク状の土の塊が女に向かって突き進む。
しかし、女は空を飛ぶように飛び上がると、そのまま暗闇に消えていった。
「私の吸血のレプリカは、生命力を徐々に吸い取っていく。あなたの命は私の手の中よ。アッハハハハハハ!!」
女の声が森の中に木霊する。
そのあとレゲンは周辺の森を探したが朝になっても女が見つかることはなく、二年経っても見つからなかった。
レゲンの右腕には女からつけられた呪印がまだ消えることなく残っていた。
呪印は数日、数年たったが消えることはなかった。
肉をえぐろうが、貫こうがその呪印は残り続けた。
レゲンは伝承がのった本を読んだり、自身で情報収集を行ったがあの不気味な女の情報を掴むことはできなかった。