女の嘘
「痛えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
カレッジの叫び声がレミアの家に響き渡る。盗賊騎士団との戦闘後治療のためレミアの家に来ていた。
「あんたバカなの?傷口焼くとか皮膚が腐るわよ」
カレッジが焼いて塞いだ傷口を開き、縫合していた。麻酔なしで。
「せめて麻酔使ってくださいよ。あとなんでリケイルとかレゲンには回復のレプリカ使ってるのに、俺には使わないんですか!!」
レゲンの肩の傷やリケイルの骨折した手はレミアのもつ回復のレプリカで一瞬で回復していた。
「レプリカは寿命を使うの知ってるでしょ?それに腹の傷はレプリカで直したでしょが」
「いや、せめて麻酔使って・・・ギャァァァァ」
傷口をこじ開けられ、悲鳴を上げるカレッジの声を聴きながらエメリアとリケイル、レゲンは隣の部屋でお茶を飲んでいた。
「しかし、無事解決してよかったですね」
「迷惑かけてすいません。みなさん」
「いいのよ。アイスノックがやらかしたことだし、身内がしでかしたことだからこちらこそごめんね」
三人が話しているとカレッジのパタリと悲鳴が消えた。
先程まで聞こえていた叫び声が消え、不気味な静けさが家を包み込んだ。
「死にましたか」
「死んだか」
リケイルとレゲンがふざけているとドアが開きレミアが部屋に入ってきた。
「手術は終わったわ」
「くそ・・・死ぬかと思った」
レミアの後ろからカレッジが包帯が巻かれた胸の傷を抑えて出てきた。どうやら手術は無事終わったようだ。
「じゃあ帰りますか」
「レゲンくん♡家に帰ってお姉ちゃんと二人だけの時間を過ごしましょう♡」
「絶対にいやです」
リケイルとレゲンが部屋から出ていくと、エメリアはカレッジの肩を優しく叩きながら帰るように促す。
カレッジは部屋から出る前にレミアの方を向いた。
「あと、そうだレミアさん。彼氏は選んだほうがいいですよ・・・特にナンパと戦闘が好きなやつはやめたほうがいい」
「・・・・・・わかったわ」
「何の話ですか?師匠」
「ちょっとした伝言さ」
そういうとカレッジは胸元の傷を押さえながら部屋からでていった。
カレッジたちの足音が遠ざかり、部屋にはレミアと静けさだけが残った。
「・・・いったわよ」
レミアの一言に窓を開け一人の男が部屋に入ってきた。なくした左手に包帯を巻いているアイスノックだ。
「あちゃーバレてたか」
アイスノックは右手で頭を掻きながらレミアの近くによる。
「全くせっかくエメリアを誘拐するお膳立てして、盗賊騎士団のアジトも教えてカレッジたちと戦えるようにしたのにこのざまとはね」
レミアが手を開いてアイスノックの前に突き出した。
「斬られた左手持ってきた?くっつけるから貸しなさい」
「いやー森の中探したんだけど、どこにもなかった。もしかしたら狼とかに持っていかれたのかもしれない」
ヘラヘラと笑うアイスノックにレミアは呆れたようにつぶやいた。
「趣味の戦いで永遠の愛を誓えなくなるとは・・・戦いの代償は重かったようね」
痛烈な皮肉にアイスノックはただ苦笑いすることしかできなかった。