騒がしい夜は突然に
日が沈みかけ夕闇がルーラ王国を包もうとしていた。
「エメリアが拐われた!?」
路地でカレッジの声が響いた。
シオンはカレッジに頭を下げた。
「私がついていながらごめんなさい、カレッジ」
「いや、シオンは悪くない。敵が何故エメリアを拐ったのか気になるな」
「なら早くルーラ王国に攻め入る必要がありますね」
「そうじゃのぉレゲン。取り返す物が一つ増えたと考えればいいだけじゃ」
レゲンとレットはシオンに気を使ったのかどうかはわからないが、ルーラ王国の城壁に見つめていた。
「だが俺達六人でエメリアを救いながら、ルーラ王国を攻め落とせるか?」
「いつになく弱気じゃない。アイスノック」
「ハン、弱気じゃないさ。女性の命がかかっているから慎重になってるんだ。お前が囚われてもそれは変わらないぞリケイル」
「あら、嬉しいけどどうせ救いに来てくれるならレゲンくんがいいわね。ねぇ、レゲンくーん」
「はいはい」
リケイルがレゲンに抱きつこうとすると、レゲンは鬱陶しそうに手でリケイルを押し返した。
だがリケイルは無理矢理抱きつこうと、体重をレゲンにかけるとレゲンはサッと身をかわしリケイルをかわした。
「とりあえず、城壁まで行くか」
カレッジの言葉を聴くと六人はルーラ王国の城壁と出発した。
城壁の上に続く階段にはルーラの騎士が何人がいたが、騒ぎにならないように、素早く倒した。
城壁の上は風が強く吹いていた。
ルーラ王国の城壁の内側は数多の騎士達とパーティーでも行うのかというほどの明かりがついていた。
城壁の上から見るだけでも、ルーラの騎士は数千人はいるのではないかというほど見える。
そして騎士達は皆、剣や弓を持っており辺りを警戒していた。
「やっぱり、俺たちが来ることはわかっていたんじゃないか?」
カレッジがその様子を見て、呟くとシオンは首を縦に振った。
「エメリアを拐った奴も嵐魔法で探知したって言ってた。恐らくこちらの動きは把握されているはず」
「まじか。ルーラ王国の騎士は優秀だな」
カレッジの言葉に特に慄く者や怯む者はこの場にはいなかった。
六人の心の中には確固たる信念とそれに勝る覚悟が宿っているからだった。
「なら、隠れても無駄ですね」
レゲンは腰から水晶のような剣、クリスタルを引き抜いた。
「ならワシがエメリアを救出に行こう。若い者達よ、存分に暴れてくれよ」
レットの薬指に嵌められた桃色の宝石が煌めく、リカバリングについたドラゴンの彫刻がルーラ王国の城を見据えていた。
「レゲンくんはあたしが守ってあげるからね」
リケイルは腕に嵌められた黒い腕輪を取ると、腕輪は黒いランスに変化した。
ブルートランスの表面に浮き出た血管のような赤い線が闘いを欲するように拍動していた。
「久しぶりの国落としだなぁ。胸が踊るぜ!!」
アイスノックは左手の手袋を取ると、透き通った朱色の義手が露わになった。
メタモルフィアの透き通った手は、ルーラの明かりに照らされて炎のように煌めき朱色の光を放っていた。
「エメリア・・・待ってて、必ず救って見せる。そしてあの弓兵に必ず借りを返す」
シオンは首元につけたペンダントを引きちぎり手に持った。白い鳥が翼を広げたようなペンダントは形を変え、雪のように白い弓になった。
シオンの手に力が籠り、サンダーロアーはそれに応えるようにバチバチと雷音を鳴らした。
「さぁ派手に暴れるか。夜のパーティーといこうかルーラ王国!!」
カレッジは腰に下げた二本の剣を抜くと、城壁から飛び降りた。
白い雲のように純白の白い剣と、夜の闇に溶けてしまいそうなほど真っ黒な剣をそれぞれ手に持ち、ルーラ王国への宣戦布告の一撃を入れた。
まるで夜風のように軽く素早い剣さばきはルーラ王国の騎士達を次々と斬り倒していく。
それに続くように、シールの騎士達は城壁の下に降りルーラの騎士達を蹴散らしていった。
まるでパーティーでも行っているかのように、騒ぎ声が王国の中を瞬く間に包み込んだ。
かつて自国を滅ぼしたシールの騎士達はルーラ王国へと攻め入った。
今再び国落としが始まる。




