運命に流されるままに
エメリアが目を覚ますとそこは暗い牢屋の中だった。
蝋燭のうっすらとした灯りが石壁を照らしていた。
手錠などはされておらず、取られたものも特にない。
「ここは・・・確かルーラの騎士に拐われて」
エメリアは状況整理するために今までの記憶を思い返していると。
「ようやく目が覚めたか」
聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。牢屋の外から足音が聞こえてくると、弓を背負った男が鉄格子の外に現れた。
エメリアを拐いここに連れてきたルーラの騎士だ。
「あなた私を誘拐してどうするつもり?」
エメリアの質問にグラムは頬から歯を除かせると、怪しく笑みを浮かべた。
「貴様にはルーラの騎士団長になってもらう」
「・・・は?」
唐突な言葉にエメリアの口は開いたままになってしまった。
「貴様は嵐魔法が使える。ルーラの騎士団長になる条件を満たしている。ちょうど席が一つ空いているしな」
「はいなります・・・って言うと思ってるの!」
「言わんだろうな。だから貴様になりますと言わせる」
グラムは背負っていた弓を持つと、見せつけるように前に突き出した。
「貴様の前にシールの騎士達の死体を持ってこよう。さすれば貴様の心も折れるだろう」
「できると思っているの?」
繕ったような笑みを浮かべるエメリアをグラムは睨みつけた。
「できるさ・・・それともここで力づくで従わせようか」
グラムの手が背中に背負っている矢に延びた。グラムの手が矢を掴もうとしたその時。
ガシッとグラムの手を誰かが力強く掴んだ。
「・・・なんのつもりだガロン!」
名を呼ばれた人物は三十代ぐらいの中年だった。茶髪の短い髪と、無精髭をした男。腰には針のように細いレイピアを下げていた。
エメリアはその人物に見覚えがあった。
「・・・ガロンさん?」
思わず名前を呼んでしまったが、ガロンは気に止めようとはしなかった。
「女性に乱暴するのは見過ごせねぇな、グラム」
「・・・フフッ、少し脅しただけだ。安心しろ何もしない」
ガロンはグラムの手離すと、グラムは手を下ろし牢屋の前から立ち去った。
「ガロンさん・・・ルーラの騎士だったんですね」
ガロンはエメリアの目を見ようとはしなかった。
ただグラムが立ち去った方向を一点見つめると、静かに言葉を吐いた。
「・・・お前がいるってことはカレッジも来てるのか?」
「はい・・・師匠もいます」
「そうか・・・なら嬢ちゃんは仲間が助けに来たらとっと逃げな」
「ガロンさんは師匠達と戦うんですか?」
エメリアの問いにガロンは口を閉ざした。そして腰に差したレイピアの柄を撫でた。
「戦うさ・・・それが運命ならな」
言葉を残すとガロンは牢屋の前から立ち去った。
最後に見せたガロンの表情は覚悟を決めたというよりも何か迷っているようにエメリアには見えた。




