風は束なり嵐となる
屋根の上にいる左頬が裂けた男は弓に矢をつがえると、シオンを狙って矢を射出した。
矢はシオン目掛けて一直線に飛んでいったが、シオンは手に青白い矢を生成すると弓につがえ射出した。
矢同士は空中でぶつかり合い、お互いの形をなくした。
「あなたどこかであったことがあったかしら?」
「フフッ、敵どころか的にすら見られてなかったとは・・・屈辱だ!」
左頬が裂けた男が腕を振るうと、男の周囲に竜巻が発生した。
「改めて自己紹介といこう。私の名前はグラム・インセント!ルーラの騎士団長だ!」
「そう、ご丁寧にどうも、私はシオン・レイダーツ。おしゃべりはいいからかかってきなさい」
グラムが腕を振るうと竜巻はシオンに向かっていった。
周囲の空気と風を巻き込みながら竜巻は大きくなり、シオンに向けて進行するが横から同じような竜巻が直撃し竜巻を打ち消した。
「な!?私の嵐魔法を打ち消しただと!?」
別の竜巻が飛んできた方向を見ると水色の髪をした少女が、刃のない柄を握っていた。
正確には刃の部分が風を纏っており、風が刀身を形成していた。
「シオンさん!私も戦います」
「・・・エメリア」
シオンとエメリアは屋根の上にいるグラムに目線を向けると、何故かグラムは狼狽えていた。
「バ、バカな。ルーラ王国の者でない者が魔法の局地に辿り着いたというのか」
「何をいってるの?」
シオンが首を傾げると、グラムは再び竜巻を飛ばした。
今度はシオンの方向に飛んでいかず、エメリアに向かっていった。
「えい!」
エメリアは風の剣を振るうと同じような竜巻が発生し、竜巻同士で相殺し形を失った。
「やはりな・・・貴様の風魔法はもはや嵐の域に達している」
「嵐?」
「気づいていないのか?貴様の使う魔法は嵐魔法だろう」
「嵐魔法なんて聞いたことないです」
「・・・無意識に使っているとは、なんという才能」
グラムは弓に矢を五本つがえると、射出した。
シオンは咄嗟に青白い矢を弓につがえるが、一本しか生成できず一本しか撃ち落とせなかった。
残りの矢はエメリアが、風の剣を振い撃ち落とした。
「きゃ!?」
いつのまにかエメリアの後ろにグラムが回り込んでおり、エメリアを脇に抱えた。
「この娘は貰っていくぞ。シールの弓兵よ、我が国の城で待つ。決着はそこでつけようぞ」
グラムの身体はまるで周りの風が彼の身体を浮かび上がらせるように、宙に浮くと空を駆けるように飛んでいった。
「エメリアァァァ!!」
シオンの声が空に響く頃には、グラムの姿は小さくなっていた。
グラムはエメリアを連れて、ルーラ王国の城の中へと消えていった。




