開戦の矢
誰しも癒えることのない傷を負って生きている
誰にも見えず、誰にも触れず、誰にも治せない
深く歪な心の傷を
次元の狭間から出るとそこには石造り道と壁に挟まれた路地だった。
路地から出ると石と木でできた街並みが広がっていた。
ミサハ王国と似通っているようで少し違うところがある。
それは建物の一部や、物などが浮いてただよっているのだ。
光の線のような物が街を照らしていた。
「ここがルーラ王国。なんかシールともミサハとも違うな」
カレッジは剣を腰の鞘に納刀すると、街並みを見渡した。
「シオンさんとレットさんは、ルーラ王国に来たことあるんですよね?」
「いやルーラ王国までは入らなかったからのぉ。わしはシール王国の元領土までしか、活動しとらんし」
レゲンとレットがシオンを見ると、シオンは両手を軽く上げて知らないとジェスチャーをとった。
「私もルーラ王国には来たことはない。それに他のルーラの街はこんなに発展していなかった」
街を見渡しても誰もルーラがミサハに宣戦布告したことを知らないのか、買い物を楽しむ者や談笑する者で溢れかえっていた。
「ルーラがミサハに宣戦布告したことはまだ話がいってないようだな」
「アイスノックもそう思うか。ならルーラ王国も準備中ってわけか」
「あう・・・なら夜襲を仕掛けるのがいい・・・」
「姉さんは貧血だし、その方が良さそうですね」
「じゃあ夜に、あの城壁に集合じゃ」
レットがルーラ王国の城壁を指で指すと、それぞれ散り散りになり、解散した。
「待って・・・エメリア」
シオンに引き止められ、エメリアは振り返るとシオンは何か言いたそうに胸を押さえていた。
まるで今から出る言葉を吐き出そうか迷っているようにも見える。
「どうしたの?シオン」
「エメリアはカレッジのことをどう思っているの?」
「え、師匠のことですか?」
「カレッジのことは好き?」
「え!?別に好きじゃないですよ!」
シオンの突拍子のない言葉にエメリアは、顔を真っ赤にして手を振るが、シオンは浮かない顔をしていた。
「私はカレッジのことが好き・・・でも私はエメリアのように側にいられる勇気がない」
「シオンさん・・・」
エメリアはシオンに近づくと、シオンの頬に手を当て顔を引き寄せた。
「シオンさんなら師匠に気持ちを伝えられますよ。こんなに師匠のことを考えているんですから」
「エメリア・・・」
シオンの何かが溶けていくように、目に光が満ちていく。
しかし、シオンとエメリアの話は突然打ち切られた。
石造りの地面に突如、矢が突き刺さったからだ。
「嵐の探知に引っかかっから来てみれば、やはりいたな」
声の方向を見ると建物の屋根の上に、弓を持った男が立っていた。
左耳はなく、左頬の肉が削れ歯がそこから見えていた。
「シール最後の弓兵よ!ミサハでの決着をつけようぞ」
「エメリア下がってて」
シオンは首にかかった白いペンダントを引きちぎり手に持つと、ペンダントは白い弓へと変化した。
「存分に撃ち合い、どちらが世界一か決めようぞ。シールの騎士」
「誰だか知らないけど、私の邪魔をするなら射殺すわよ!」
ルーラ王国での激しい戦闘の火蓋は、二人の弓兵により落とされるのであった。




